長期休暇
いよいよ大型連休です!四半期報告の時期が重なっているので、どうも実感が湧きませんが(泣)
ところで、ファンドマネージャーなどの不正を防止するリスク管理手法の一つに、「長期連続休暇」というのがあります。
本来は2週間、すくなくとも1週間以上、連続して日常業務から担当者をはずすことで、許容リスクを超えた取引や伝票不正などの有無の多くがチェックできると考えられているからです。
過去実際に起きた金融機関の大規模な損失の多くも、この長期休暇制度によって防ぐことができたと見られています。
コンピューターシステムによる機械的な管理体制が充実していない、小規模の運用会社などでは、特にこういった対策が有効です。
担当ファンドマネージャーが長期休暇に入ったら、文句を言うのではなく、誉めてあげなければいけないということですね。
では、よいゴールデンウィークをお過ごしください。
(このコラムも5月10日まで不定期更新となります。ご了承ください)
(2004.04.27)
断る勇気
スポンサーの運用基本方針に書かれている目標や理念が、もし運用機関としての投資哲学と異なるものであるのなら、受託を断る、という選択肢も一つなのではないかと感じることがあります。
例えば、運用目標が運用機関の期待収益率よりはるかに高いところに想定されている運用基本方針を受け取ることは、バランス型の運用機関として受託者責任上問題はないのでしょうか。
運用基本方針とガイドラインを受け取った時点で、運用機関はそこに書かれた内容に合意したのです。合意した以上、運用機関はその精神に則って運用する義務があります。その内容が運用機関本来の投資哲学と相違するのであれば、受託すべきではありません。
目先の利益にとらわれず断る見識も必要なのではないかと思います。
(2004.04.26)
私作る人、君達守る人
現職の経済閣僚が国民年金未納、なんて、怒りを通り越して笑い話でしょう。
この件に限らず議員の先生方は、なんだか法律を守るという意識が希薄ですよね。
国会議員というのは、法律を作るために存在しているのであって、予算をばら撒くために存在しているのではありません。
まさか、昔のCMのように、"僕作る人・君守る人…"なんて思っているわけではないとは思いますが。
追伸:総理大臣殿、都合の悪いことを秘書と家族のせいにするのは止めましょうね。貴方がた議員も、一応立派な社会人なんだから。
(2004.04.25)
個人への投資教育
米国では、すっかり利上げムードが出来上がっているようです。年前半に0.25%、夏以降に0.25%程度の利上げがあることを、ほぼ織り込みつつあるとも言われています。
そんな中、全米証券業協会は、金利上昇時には債券価格の下落リスクがあるということを、個人投資家向けに改めて警告しています。協会の調査によると個人投資家のうち6割もの人が、金利上昇と債券価格との関係を理解していない、という結果が出ているそうです。
退職金や401K年金などで投資をしている債券ファンドも、金利上昇過程では元本割れを起こす可能性があることは、あれほど証券投資教育の進んでいる米国でさえも、あまり認識されていないということなのでしょう。
個人に対する投資教育というのが、いかに困難なものであるのか、これから確定拠出年金をスタートさせる企業は、よくよく理解して対応すべきだと思います。
(2004.04.22)
バブル以前との比較
現在のTOPIXの水準に近い時期を探すと、1985年末あたりになります。85年12月末を基準に東証33業種分類で騰落率を見てみると、現在値が85年末を越えている業種と超えていない業種とが約半々になります。
輸送用機器・ゴム・精密 などはおおよそ当時の2倍以上。一方、銀行・鉱業・空運 などは当時の半値以下となっています。
バブル・円高・ITバブル・金融不安・テロ、といった、さまざまな要因があったにせよ、中長期では淡々を成長を続けていた業種と、後ろ向きの処理に翻弄された業種との差がはっきりと出ているように感じます。
この順位は、日経平均が最高値をつけた89年12月末を基準としても、あまり変化はありません。
株価というものは、一時的な需給やバブルの影響で乱高下したとしても、結局は企業業績を映す鏡でしかないということを、この18年間は教えてくれているのかもしれません。
(2004.04.21)
オリンピック世代!
近頃、上場企業の人事でも40歳代前半で社長に就任するケースが出てきています。
「団塊の世代」のように、世代というものにある種の特殊性を見出せるとするなら、今の40歳代前半を「オリンピック世代」とでも称して見ましょう。
私を含め、昭和39年の東京オリンピック前後に生まれた者は、まさに技術の発展を実感しながら育ってきています。幼児期の記憶はテレビも写真もまだ白黒で、小学校ではドラえもんを読んで未来に憧れ、10代後半でウォークマンが登場し、就職活動ではSE(システムエンジニア)という職種が花形となっていました。
就職後、まだよく状況を理解する前にバブルが来、気がついたら終わってた…。
世の中は変るもの。世の中は動くもの。山もあれば谷もある。
だから、自分たちで何かを変えることは出来るし、新しい時代を作ることもできる。
こんな風に思っている「脳天気」なオリンピック世代が、これからの日本の中心となっていきます。日本の閉塞感の払拭には最適な人材なのではないかと、ひそかに自負しているのです。
(2004.04.20)
為替オーバーレイ
為替のオーバーレイ取引は、ヘッジファンドの運用手法の内の一つです。
なとど言うと、驚くほどスポンサーの方から反発を受けます(笑)。為替リスクをヘッジするために行うもので、ヘッジファンドなどと言う表現はそぐわない、というご意見が多いようです。
しかし、
為替リスクをヘッジすることだけが目的なら、外債のベンチマークを例えば「ヘッジ外債」と称しているもののように、円ヘッジ付のものに変更すればすみます。当然、ヘッジ前であろうとヘッジ後であろうと、運用報酬にほとんど差異はありません。
一方新たに、為替のオーバーレイ業者を採用すると、現実に運用している資産総額の外側で更に運用報酬が発生します。
これが意味していることは、「ヘッジ」そのものが目的なのではなく、為替取引という追加のリスクを取って追加の収益を狙いにいっているということです。
円高リスクを回避することだけが目的なのであれば、追加の報酬を払ってまでオーバーレイ業者を使う必要はありません。
為替市場という非効率的な市場であえてリスクを上乗せして、追加的リターンを追及したい、と思うからこそ、運用報酬を払ってまで為替取引をするのです。
為替オーバーレイ取引とは、アクティブ運用の一つの形態にすぎないということを十分ご理解のうえ、活用していただきたいと思っています。
(2004.04.19)
取材で嫌な思いをしないために。
新聞・雑誌・テレビなどの取材記者の方達の多くは、インタビューに来る前に、既に記者として、もしくは会社としての、結論を持っていることが多いです。
予定されている特集の結論は、企画の段階で既に決まっていて、取材はその結論を裏付けるための証言集めなのです。
だから、答えたことのうち一部分だけを抜き取られたり、発言趣旨とは異なる使われ方をしてしまうケースが出てくるのだと思います。
業界のためと思って応じた取材が、全く異なる結論に使われることほど腹の経つことはありません。
こうしたことを避けるためには、取材意図と想定されている結論を事前によく確認すること、そしてよほどのメリットがない限り、匿名取材に徹すること、しかありません。
マスコミ対応にも、リスク管理は必要です。
(2004.04.18)
批判のタイミング
リスクを取った成功者は果敢な勇者と賞賛され、リスクを取った失敗者は無謀な愚か者とされる。
イラクでの人質解放は無条件に喜ばしいことです。
それでも、やはり行った本人達が悪い、という意見には同意します。
ただし、戦地でのボランティアを賞賛する記事をのせていたマスコミが、また戦闘地域での映像をスクープとして取り上げていたマスコミが、手のひらを返したように人質になった人達の自己責任を問う姿に、かなり違和感を覚えます。
自戒を込めて、批判というのは本当にむずかしいものだと感じています。
(2004.04.15)
日本の技術とウサギ小屋
唐突ですが…日本の技術を支えているのは、実は狭い国土なのではないかと、思っています。
日本での家電商品のパターンを見ていると、新商品ができ、市場に需要ができ、大量生産によるコストダウンが可能となり、さらに小型化され、ようやく市民権を得る。と段階を踏んでいます。
時代を支えている液晶にしても、ブラウン管ではなくもっと薄くて小さい媒体へのニーズがあったからこそ、世界一の液晶技術大国になったわけです。
では、なぜ日本において「小さい」ということがそれほど意味があるのでしょうか?答えは簡単で、家が狭いから(笑)です。言い方を帰れば居住空間に支払うコストが高い。
1坪1万円の家賃と想定すると、テレビや洗濯機やパソコンなどの床面積が半分になれば、それだけで月間1万円ぐらいの節約になります。小型化のために多少割高なコストを払っても、消費者としての経済合理性は成り立つわけです。
うさぎ小屋と揶揄されようが、それが日本を支えていると考えれば、我慢のし甲斐もあるというものです?
(2004.04.14)
投資顧問業法を読んだことがありますか?
年金スポンサーの皆さん、投資顧問業法を呼んだことがありますか?
日本の証券投資顧問業は内閣総理大臣の認可事項であり、その法令違反には禁固刑も適用されるという大変厳しいものです。{リンク}
利回り保証や損失補てんの禁止、また同一社内における他の顧客の不利益となるような取引の禁止、系列資本の関連会社との取引の規制、などが禁止事項として明記されています。通常はこういった行為そのものはもちろん、そういった行使をしていると誤解される取引や説明をすることも行政指導の対象となります。
これまではスポンサーサイドで特に気にしなくても、法令違反に遭遇するケースはほとんどありませんでした。しかし最近はオルタナティブなどを通して、種種雑多な会社が年金スポンサーにコンタクトをしてくるようになって来ています。
運用会社が年金資産を受託するに際し、問題のない会社かどうかを、スポンサーサイドでもチェックせざるを得ない時代になっているような気がします。
是非一度、ご一読をお勧めします。
(2004.04.13)
インフレの輸出
気になる新聞記事を見つけました。
---アジア地域では、商品市場の高騰を背景に消費者物価指数が上昇している。今後数ヶ月で、米国やその他の地域でも、このインフレが輸出されることから、インフレ昂進の可能性が高まった。---ウォールストリートジャーナル4月12日
言われるまでもなく、現在米国や日本がアジア諸国から輸入しているのは、野菜や衣類ではなく、実は廉価な労働力そのものです。
さらに、その労働価格には現地の生活者物価に対するクッションがほとんどない、ということも意識しなければなりません。
表面的には日本や米国の経済力は現在の石油価格の上昇を吸収できているように見えます。しかし、経済基盤の弱いアジアの多くの国が価格上昇を最終消費者に転嫁させれば、労働コストの増加、というプロセスを経て、欧米や日本も無関係ではいられないことになるのです。
デフレ・インフレを問わず、アジアの経済が日米の物価動向に大きな影響を与えていることに注意が必要です。
(2004.04.12)
米国金利が上昇している理由
4月に入り、米国の長期金利の上昇(価格の下落)が続いています。
利上げの鍵と見られる雇用統計の数字が予想以上に好転していたことが直接の理由とされていますが、もっと大きな理由は日本の為替介入の停止なのではないかと感じています。
1ヶ月ほど前、米国の債券運用者と話していて、今の米国の債券動向を決める最も大きい要因は、日本を中心とするアジアの中央銀行の米国国債の購入が継続されるかどうか、であり、米国内の経済環境などは二の次だとのコメントがありました。
この1年での介入資金は30兆円以上に及び、この多くは米国国債の購入に当てられています。最近の日本の為替介入方針に変更があったのではないかとの憶測と、テロ不安から円高に歯止めがかかっている状況とをあわせると、これまでの1年のような規模での米国債の購入を日本に期待するのは難しいのではないかとの思惑が市場に生まれていてもおかしくはありません。
米国国債の次の担い手が出てくるまで、米国の債券市場は不安定な動きが続くかもしれません。
(2004.04.11)
バーチャルな揺らぎ…
ほぼ毎日のように起きる顧客情報の漏洩。
春の到来とともに過ぎ去る鳥インフルエンザの恐怖。
そして、途切れることのないテロの犠牲者。
色々な事がありすぎると、反応速度が段々だんだん遅くなる。
その内に、直接自分の身に降りかかる痛みしか感じられなくなってしまうのだろうか。
イラクでおきた最悪の状況に、でもきっと想像できていた結果に、思考が停止しています…
(2004.04.09)
人は人・自分は自分…
平成15年度の運用結果が確定し始めました。
久しぶりに気持ちの良い期末を迎えられて本当に良かったです。
これから新聞などで信託会社の標準型利回りなどが発表されていくことと思いますが、15年度については代行返上のための現金化作業を進めた基金も多く、実際の利回りは信託や生保などから発表されるものよりは、低くなるでしょう。
さらに、今年度以降についてみれば、多くの基金で予定利率が変更されており、これまでのように横並びでの運用比較はますます難しくなります。目標利回りを2%と置いている基金にとっての10%の収益と、目標を5.5と置いている基金にとっての10%という収益が持つ意味は、当然のことながら全く異なるものだからです。
市場に煽られて、目的を見失わない強い意志が、これからの基金運営には求められています。
(2004.04.07)
リスク管理と想像力
六本木ヒルズとその隣接するホテルに行ってみました。
回転ドアの事故があったという潜入感もあったかもしれませんが、「不便で危ない」という感想は否めませんでした。
バリヤフリーが常識化している昨今としては、少し考えづらいほどの構造で驚きました。
危険ですから建物内で子供を走らせないでください、と言っているガードマンさんがいましたが、そもそも子供は走るもので、走ったぐらいで危ないことが起きるようなビルの構造に問題があるのです。
事故が続いている回転遊具にしても、穴があれば指を入れてみたくなるのが子供です。そのような穴が絶対にできない構造にするのがメーカーの役目です。
『リスク管理は想像力です。』
これは金融もメーカーも全てに共通する基本原則なのだと思います。
(2004.04.06)
テロと金融緩和と相場上昇の微妙な関係…
冷静に考えて、今我々の置かれている国際環境、否、国内環境は、戦後最も危険であるといえるのでしょう。
客観的に見て、米国の金融緩和は長すぎるしドルは世界中で余っているといえるでしょう。
結果だけから見ると世界経済は力強く、資産価値の上昇は今後も続くと思われているようです。
少し言い方を変えてみましょう。
国際政治が戦後最大の危機にあり、地政学的リスクが主要国で等しく高まっているにもかかわらず、金融市場が安定を保っていられるのは、ひとえにドルを中心とした過剰流動性のおかげです。
では何故これほど長い間、過剰流動性が保たれているかというと、上向いてきた景気をひっくり返しかねない程の地政学的緊張が日々持続しているからに他なりません。
多少の景気上昇があったとしても、テロの恐怖がある限り今の流動性を回収することは非常に難しいと思えます。
国際政治が不安定であるがためにお金はあまり市場は上がる。
我々はなんとも不気味なトライアングルの上をただぐるぐる回っているだけなのかもしれません。
(2004.04.05)
年金改革と選挙
年金改革法案の審議が進みません。
総合型基金や代行を持っている基金の事務局にとっては、気の重いことです。
今回の政府の年金改革法案が中途半端なものであることは、誰しもが感じていることです。ただ、だからといっていわゆる抜本改革案が、半年や一年で出来上がるわけではないでしょう。
健康保険や介護保険、さらには生活保護などの社会保障制度全般のあるべき姿、それに財源をあわせて、国の将来を根本的に考え直さなければ、何一つ解決しないのは言うまでもないことです。
年金制度の一元化などそんなに簡単なことではないことは、現在の公的年金制度がサラリーマンの厚生年金におんぶに抱っこ状態であることでも明らかです。
政治家の身勝手で選挙前に突然議論をして、短絡的に結論が出るような単純なものではないはずです。
どうぞ年金制度を目先の選挙の道具にするようなことは止めてもらえないものでしょうか。
(2004.04.04)
(2004.04.02)
マネーゲームから離れてきた石油市場
原油市場が13年ぶりの高値をつけています。
13年前といえば、湾岸戦争の時です。
湾岸戦争終結後、長期低迷状態にあった石油市場は、2000年のITバブル時のマネーゲームに便乗する形で急騰・急落し、昨年来の世界的なマネーゲームと共に復活して来ています。
ただ、湾岸戦争の時や、ITバブルの時は、原油の期近(受け渡し日が近い取引)と期先(受け渡し日が遠い取引)との差が拡大しながら上昇していったものが、今は、現在値と先渡値の差が安定したまま上昇しています。
これは、目先の心理的要因や、投機的な要素での原油上昇ではなく、将来的にもしばらく原油需給が逼迫することを見越した、価格上昇であると見るべきでしょう。
景気拡大に伴う需要の増大と、中東情勢の緊迫化の長期化、米国の中東に対する発言力の低下、といった幾つかの要素が、市場を強気にさせているようです。
今年度の波乱は、石油にあるかもしれません。
(2004.04.01)