オリンピック
2月29日という日付をみて、ああオリンピックの年だ、と実感しました。
普段は見ることのないスポーツでも、オリンピックだけは見てしまうのは何故だろう?と考えました。
練習や予選でどんなに良い結果であっても、本番の結果だけが全てです。
当日どんなに自分に不利な環境であってもそこで結果を出さなければ、意味がないのです。
『4年に一度の一発勝負』そういう言い訳のない世界での映像だからこそ、引き付けられてしまうのです。
いや、別に運用の世界で感動しないと言っているのではありません…決して。
(2004.02.29)
パッシブ運用の精度
正直に言って、パッシブ運用のトラッキングエラーについてあまり興味がありません。
エラーがあってよいと言っているわけではないのですが、エラーの原因の多くが、いわゆる「評価差異」に属するものだからです。逆にいえば「評価差異」以外のポイントがあれば、真剣にお聞きします。
ベンチマークというものは、東証が計算してくれているTOPIXを除けば、そのほとんどが民間の証券会社によって策定され、その評価値はその証券会社の発表する価格で計算されています。
特に債券のように一物一価ではないものについては、証券会社の数だけ評価値は存在するのです。また株式の配当に課税されるかどうかは国ごとにルールが異なり、米国基準で計算されたものが日本でそのまま適用されるはずがないのです。
こうした制度上の評価差異に、スポンサーやコンサルがこだわると、運用機関の貴重な人的資源が「評価差異」をいかに最小化するか、などという運用の本質とは関係のない極めて非生産的な行動に費やされてしまいます。
だから、私はパッシブの評価差異には興味を持たないことにしています。
(2004.02.26)
キメラは嫌い
頭はライオン、胴はヤギ。見たいな運用提案を、最近よく見かけるようになりました。
国内債券と為替のヘッジファンドとの組合せ。
ショートデュレーションファンドと株のロング-ショートの組み合わせ。
相手をデリバティブにすれば、確かにどんなパッケージでも可能です。「でも眼の前にあるものを、とりあえず合体させたら、こんな物ができました。」といわれても評価のしようがありません。
組み合わせた結果として仮にインフォメーションレシオが上がったとしても、上がった理由を運用会社として理論的に検証できなければ、その後のリスク管理もできないのではないでしょうか。
おとなしそうな外見にだまされて、火を吹くキメラを飼うよりも、初めから覚悟して猛獣使いになった方がまだ安全だと思うのです。
(2004.02.25)
本の紹介
久々に、本のご紹介です。
「経済学殺人事件」マーシャル・ジェポンズ(日経ビジネス人文庫)
帯には経済学の基本的な考え方が身に付く…などど堅苦しいことが書いてありますが、肩の凝らないミステリー小説です。
基本的には、経済学以外の学部の教授達が経済学の論文について持つ疑問や感想を、経済学の教授が解説する形で、話が進んでいきます。
数学者や心理学者や文学者らの、経済学についての批判や疑問は、経済学者からみればとんでもなく的外れなものなのですが、その的外れな質問への回答が経済学の説明になっているのと同時に、質問そのものが経済学へのアンチテーゼにもなっています。
運用機関とスポンサーの会話みたいだ、などと思いながら、楽しく読ませていただきました。
(2004.02.24)
緊張感のない…
外国為替市場によると、「日本政府がテロに対する警戒を最高水準に引き上げている」らしい。「だから3ヶ月ぶりの円安になっている」らしい。
そういえば都営地下鉄のごみ箱は、「都合により今週一杯自主撤去」されていて、品川駅には何故か警官が立っている。
ところでこういった情報は、どこに聞けば教えてくれるのか、どなたかご存知ですか???
そもそも、らしい。とか、そういえば。とか、何故か。とかいう修飾語が着くような事柄ではないのではないかと思うのですがいかがでしょう。
ただこうして売られた円を見て、買われるわが国の株式市場もまた、いかがなものかと。
緊張感のない政府・緊張感のない国民・緊張感のない市場…
(2004.02.23)
企業のコミットメントと受託者責任
企業が年金資産管理に積極的に関わる傾向が強くなっているようです。
代行返上後の確定給付型であろうと確定拠出型であろうと、年金資産に受託者責任が発生することには、なんら変更はありません。
企業年金にそもそも母体とは独立した法人格を持たせたのは、行政の一部を代行させるという理由以外に、母体企業の利益とは乖離させ、「年金需給者のためだけの資産管理業務」を行わなせる、という目的があったはずです。
年金の受給権が企業の都合で没収されたり、自社株買いを強制されたり、資産を流用されたり、といった世界的な歴史を繰り返さないために、「受託者責任」という言葉を浸透させてきたのです。
年金が企業会計に負担をかけているという現実の前に、せっかく積み重ねてきた「受託者責任」という言葉の重みが段々軽くなっていくような嫌な予感がしています。
(2004.02.22)
ヘッジファンドの社内教育
海外のFoFのゲートキーパーと提携している信託銀行や投資顧問に対して、「彼らは果たして投資家なのだろうか、売り手なのだろうか」という疑問を口にされたスポンサーがいらっしゃいました。
「自分の銀行の資金で投資をするのならもっとリスクについて真剣に調べるだろうし、販売業者であるのならもっと商品特性にについての知識を持っているだろう。そのどちらでもない単なる仲介者を経由してヘッジファンドなどという未知のものに投資をすることはできない。」というお言葉は本当にもっともだと思います。
もちろん実際にゲートキーパーとコンタクトをとっている担当者の方は、リスク管理についても商品特性についても充分な知識を持っているのだとは思います。ただ社内でその商品のことを理解できているのが担当者数人だけ、というのでは意味がありません。
会社としてヘッジファンドに取り組む時は社内教育に十分な時間をかけるべきだと感じています。
(2004.02.19)
GDP7% !
バブル期以降最大の景気回復だそうです。
企業業績・設備投資・個人消費が満遍なく回復しているという形は、本当に久しぶりなのだと思います。
個人消費が本当に伸びているのか、という点に疑問を持つ方も多いと思いますが、デジタル関連だけでなく掃除機・エアコン・洗濯機などの日常電化製品の買い替えも順調に進んでいるようです。
不況と節約に飽きた消費者と、メーカーの技術革新のタイミングが上手くマッチングした結果でしょう。
あとは、中国の経済システムさえ安定化されれば言うことなしなのですが、こればかりはなんともいえません。
少なくても次の北京オリンピックまでは大きな波乱なく中国経済の成長は続くだろう、というのが大方の見通しのようですが、この話にも特に根拠があるわけではなさそうです。
日本の不良債権処理の峠を越したあとは、中国経済が金融市場の台風の目になる気がしています。
(2004.02.18)
リスクとチャンス
①8000円の宝くじのあった人にダブルチャンスがついていました。当選確率85%で当たったら賞金は1万円、外れたらゼロ。
②8000円の借金のある人に抽選券が届きました。2000円払えば借金全額棒引きくじを差し上げます。但し当選確率は15%です。
さて①と②では、どちらを選択する人が多いと思いますか?
8000円がゼロ円になってしまう「リスク」をとって賭けをする人より、どうせマイナスになっている資金を取り返す「チャンス」に賭ける人の方が、圧倒的に多いのではないでしょうか。
では表現を変えて
①は確実な利益8000円と期待値8500円の賭け。
②は確実な損失8000円と期待値マイナス8500円の賭け。
とみてみると、感じ方が随分違います。
統計が成り立つほどの回数を行えば、①はプラスで②はマイナスの賭けであることが判ります。
但し、一発勝負に絶対の自信がある方は別です…
(2004.02.17)
ネットでの営業
一部の信託銀行が、年金基金向けサービスをネット化するとの新聞記事を見て、ニヤニヤしてました。
実は当社でも4年ほど前、「インターネットでのコンサルティング」を立ち上げようと思い、お客さまのサウンドをしたことがあったのです。少人数の我々にとっては「効率の良い業務形態」ではないかと思ったのですが、結局止めました。
「効率の良いサービス業」などどいうコンセプトはそもそもなりたたないという事に気付いたからです。
インターネットを通してデータや定型の情報を取ることはできたとしても、それは我々の業務の道具の一部に過ぎません。その道具を使ってスポンサーごとに必要な付加価値を創造するのが唯一の我々の存在意義であって、データベースや分析シートそのものを商売にするつもりもないし、できるとも思えませんでした。
そしてこれからも効率の悪いサービス業だけを清々と続けていくことでしょう。
(2004.02.16)
ネガティブリスト
新年度のマネージャーストラクチャーをしていると、我々の定性評価や定量評価以前に、スポンサーの方からの意見や要望が出るケースがあります。
委託者と受託者との間に最も必要なことは信頼関係だと考えているので、我々の客観的な評価を逸脱しない範囲では、できるだけそういったご要望も考慮したストラクチャー案を作ることにしています。
実はこの時、「ここを採用してみたい」というポジティブリストだけでなく、「ここだけは採用したくない」とか、「今採用しているこの会社とはもう付き合いたくない」といったネガティブリストも同時に出てきています。
不思議なことに、ポジティブリストは基金ごと比較的バラバラなのですが、ネガティブリストはある時期特定の運用機関に集中する傾向があります。
理由は一定ではなく、パフォーマンスのせいだけとも限りません。
ここ数年の会社の姿勢や営業スタンスなど、細かいことの積み重ねの結果である場合が多いようです。
契約件数が減少している運用機関が大事にすべきなのは、コンサルタント会社の評価ではなく、スポンサーの生の声なのではないかと感じています。
(2004.02.14)
オルタナティブという呼称
そろそろ、「オルタナティブ」という表現を使うのは止めにしようか、と最近考えています。
不動産投資とヘッジファンドを一括りにするような表現は正確ではない、というのも一つの理由ですが、先物等で市場リスクをコントロールするタイプの運用がそろそろ増えてきているため、伝統的資産運用とオルタナティブ運用の垣根がかなり下がってきている、というのが一番の理由です。
また、リスクを下げるために導入するはずのオルタナティブ枠で、気がついたら、高いリターンを狙う高リスク商品ばかり組入れていた、などということをなくすためにも、呼称をもう少し限定して正確に使用したほうがよい時期がきているような気がしています。
どのような表現がよいのか、整理がついたらまたご報告します。
(2004.02.12)
仕事と作業
言葉を出したり、物を書いたり、する前に、ちゃんと自分の頭を通過させた行動は「仕事」。目の前の用事を事務的に片付けるのは「作業」。
きっとこれは業務の難易度とか専門性とかには全然関係なくて、例えばコピー一つにも、仕事と作業があるような気がしてます。
などと偉そうなことを言ったところで、時間や気持ちに余裕がなくなると、仕事がどんどん作業になりミスが増えて落ち込んでいるのは、誰でもなく自分自身であったりするわけですが。
週半ばの休日で少し頭がリフレッシュしたところで、又明日からがんばって「仕事」をしようと思っています。(単なる反省文ですね…)
(2004.02.11)
信託銀行の役割
今、多くの基金が信託銀行に、特に総幹事の信託銀行に求めていることは、「金利が上がりそうだ」、「為替が怖い」、「株が売られ始めたらどうしよう」、といったかなり具体的な事象に対する、対処やファンド選択についての提案です。
我々コンサルティング会社が契約している基金数は、基金全体から見れば、まだまだ少数です。特に小規模の基金の多くは総幹事を頼らざるを得ないのが現状でしょう。
一方信託銀行には、コンサルタントが入るなどしてかなり細かいマネージャーストラクチャーをする際に役立ちそうな新しい運用商品は沢山用意されていますが、総幹事を頼っている小規模の基金に対し信託自身でストーリーを組み立て新ファンドなどを組み込んだ提案をするケースは少ないようです。
コンサルや大規模基金のための商品開発ではなく、本当に総幹事を必要としている基金の役に立つ商品作りをするべきなのではないかと感じています。
(2004.02.09)
セグウェイ?!
年金とは全然関係ないですが…
「セグウェイ」っていう乗り物ご存知ですか?時代を変える発明!とかと大々的に宣伝された、妙な形の乗り物です。
電動バッテリーで、最高時速20kmぐらいで、アクセルとかブレーキとかはなくて、体重移動で動いたり止まったりして、などなどなど、まあこれまでの乗り物とは、異次元の物体らしいです。
で、これを公道で乗った(乗らせた?)人が道路交通法違反で書類送検、との記事があり、その理由にかなり笑激をうけました。
”手で握るか、足で踏むか、のブレーキがなければ公道は走れない”のだそうです。そういうのがないから、セグウェイなんです、なんてことははなからきいてなくて、そんな自動車でも二輪車でもなく、かつ20KMものスピードがでるようなわけわからないものは駄目。という結論を説明すると、そういうロジックになるのですねぇ。
行政が技術の発展についていくのも、大変なことなのだと、妙に納得した週末でした。
(2004.02.08)
商品先物業者
金融先物だけでなく主にシカゴに上場している商品先物も投資対象としたオルタナティブ運用が日本にも幾つか紹介されるようになりました。
しかしながら、基金の方や運用委員の方々の「商品先物」という言葉に対するイメージが悪いためか、なかなか採用にいたるケースはありません。
日本の商品先物業の未整備が、こうした海外ファンドの導入にも障害となっているのです。日本の商品先物会社と直接話をしてみても、彼らから業界の透明性を高め、グローバル市場の一員になろう、などという理念を感じることは殆どありません。未だに日本だけの歪んだニッチな市場で、自分達だけが儲かればそれでよい、と思っているふしがあります。
あまりに悪い見本がそばにあるため、日本の投資家の選択肢が狭められているのです。
監督官庁を含め業界の正常化に是非真剣に取り組んで欲しいと要望します。
(2004.02.05)
海外勢の戻る場所
昨年、一貫して日本株を買い越してきた海外勢の動きに変化が見られるようになっています。
基本的に日本株をアンダーウェイトとしていたことの調整買いが主体であったことに、円高が重なり、ドルベースでの日本株の買い妙味が高まったことが、これまでの外人買いのおもな理由でした。
さて、さすがにドルベースで50%を超える収益を前に、G7での為替の反転リスク、そして毎年日本の市場は決算前の2月に売られる、という経験則とで、ここは一旦売っておこうか、と彼らが考えるのは当然かもしれません。
問題は、G7でドル安の流れに変化がないことが確認されたとき、海外勢が再び日本株に戻ってくるかどうかです。
為替差益をねらって、円資産には戻ってくるにしても、意外と投資先は株ではなく債券である可能性は否定できません。
長期金利の1%割れなど二度とこないなどとと思っている人には、要注意です。
(2004.02.04)
委託者の立場にたった運用報告
年金資産は、年金基金のものではなく、加入者や受給者からの預かり物です。だから、基金は運用機関に資産運用を委託するのと同時に、本来の持ち主に対し、運用内容の説明義務があります。
などというあたりまえのことを、今さら言うほどのこともないのですが、運用報告会に同席していると、このことを認識していない運用会社がまだ沢山あることに気付きます。
例えば、一般の新聞紙上をにぎわせた企業の株式を保有しているような場合、収益率に大きな影響がなくてもその銘柄や企業について、個別に説明資料を用意するぐらいのことは必要なのではないでしょうか。
不幸にもその企業が破綻したときに、何故基金の財産でその銘柄を保有していたのか、ということを、基金もまた運用委員会や代議委員会で説明しなければならないからです。
またパフォーマンスが急激に悪化したときに、運用機関にとって必要なことは、お詫びをすることではなく、基金自信が第三者に説明出来るような資料を一枚つけてあげることなのではないかとも思います。
自分達の立場だけではなく、基金の立場にたった、運用報告資料を作っていただけるとありがたいと思います。
(2004.02.03)
店頭株…
こういう切り口で表現することには異論も多々あるとは思いますが、今年度の国内株式のパフォーマンスの上下は、店頭株の組み入れ比率の大小と比例します。もちろん店頭株の中にも下がったものもあるのですから、個別銘柄の選択効果が貢献しなかったというつもりはありません。ただ現実的には主力大型株でリスクをとらず、店頭株でメリハリをつけたファンドのパフォーマンスがよかったことも事実です。
ファンドごとに特色のある銘柄を発掘している例もありますが、多くの店頭銘柄は複数の運用機関のファンドで共通に組み入れられています。
少し99年のIT相場のときに様子が似ているのが気になります。
もちろん、売りたくなっても買い手がいなかったITバブルの経験は、ファンドマネージャーの記憶にはまだ鮮明に残っていると思いますので、あまり心配はしていません。
ただネット関連の店頭株のうち、未だ99年の高値の4分の1以下の値段しかついていない銘柄も少なくないことを、忘れないで欲しいと思っています。
(2004.02.02)
牛丼と500円玉
今回の牛肉の禁輸で一つ確認できることがありそうです。消費者は2百何十円の牛丼が食べたかったのか?それともコーヒー飲んで500円でお釣りのくる昼食が必要だったのか?
牛丼から別メニューへの切り替えが予想以上に上手く進んでいる、との報道を見る限り、外食産業の価格を破壊した牛丼は、商品そのものではなく、「ワンコインで一食」という食生活を、定着させたことになるのかもしれません。
長期にわたるデフレは、消費者の物の価格に対する視線を大変厳しいものにしています。世界的にみれば原材料ベースでのデフレは既に収束していると見られ、除々にインフレの足跡が聞こえてきています。
デフレに麻痺した消費者にどのように価格転嫁をしていくかを、そろそろ真剣に考え始めなければ、深刻な消費不況を招きかねません。
(2004.02.01)