マネージドフューチャーズ
為替・金利・株式・貴金属・穀物・鉄鋼・エネルギー・食肉・牛??これらは全てシカゴの先物市場で取り扱われている商品です。先物市場ですから株式のように毎日毎分売り買いが行われ値段が付きます。米国の証券外務員試験の一種に先物オプション業務というカテゴリーがあります。
その試験では、為替や金利は何故動くか?という類の質問も出ますが、一方で牛や大豆の取引単位の呼称を聞く問いもあります。米国では日本で考えるより、証券取引と商品取引との垣根がかなり低く、証券会社が商品先物の専門会社を持っている例も多く見られます。
あらゆる先物取引を対象とし裁定機会を狙う運用手法を「マネージド・フューチャーズ」といい、米国の年金に占める割合も最近増えてきているようです。日本では商品取引市場への先入観が余りよくないせいもありなかなか理解されない仕組みですが、あまり毛嫌いせずに少しずつ勉強していくのもよいのではないかと思っています。
(2003.08.29)
証券用語はむずかしい?
基金の運用委員会などで勉強会の講師をさせていただくことが良くあります。もちろんカタカナ用語をできるだけ使わないように意識して話します。ただ最近、問題なのはカタカナ用語より金融や証券特有の単語や言い回しの方だということに気づきました。例えば「先物」という言葉を説明する時には「今より先の日付での売り買いの約束をすることです」と表現しがちです。ところがそもそも『先』の日付というのが、現在よりも過去なのか将来なのかが明確ではないのです。一般的に『先』というのは「時間的な手前」を指す言葉であって、「将来」と言う意味ではありません。また有価証券の「債券」と「債権」との文字の違いをまずきちんと説明しない限り、「さいけんの値段」が株価のように上下するということを理解してもらうのは不可能です。自分達があまりにも日常的に使っているため、その言葉が一般的でないということに、なかなか気が付かないものだと反省しています。
(2003.08.28)
営業力と運用力
運用機関の預り残高というものは、運用内容が良ければ増え、悪ければ減る。こんなあたりまえのことが未だ理解できていない経営者が日本の金融機関にはまだ沢山いるらしい。身近なところでは個人向け投信もその一例だが、運用内容は二の次として、販社の営業力さえあれば残高を積み上げることができる。年金の世界も無縁ではない。営業力の強い会社の残高はパフォーマンスがどうであれ減ることはなく、営業力の弱い会社の残高はファンドの質が相対的によくても減少する。結果として営業力の強い会社ほど運用の質に対する緊張感が薄れさらにパフォーマンスは悪化する。
良い俳優を育てるのは良い観客です。時代遅れの金融機関の目を覚まさせることができるのは、スポンサーの確かな眼と強い意志だけです。障害は色々ありますが一緒にがんばりませんか。
(2003.08.27)
ここから先は債券と株はパッケージです
国内債券が0.5%近辺にいた頃、実は基金の方に「年金が国内債券を一斉に売れば少しは金利が上がって買いやすくなるかもしれませんよ」などど半分冗談半分本気でお話していました。もちろん基金の意思だけでできることではありませんし、運用機関の方にも笑って聞き流されましたが…。
最近の金利上昇を受けて、やっぱり債券売りましょうか?とお問い合わせいただくことが増えています。当然答えは「NO」です。0.5%の債券を持っている必要がないと言ったのは、金利の上昇を予測していたわけではありません。金利がゼロ以下にならない以上幾ら債券を保有していても金利低下の恩恵を受けることができず、株価の下落を相殺することが出来ないからです。
現状株が上がり、債券が売られたため、債券価格と株式価格との間では再び正常な逆相関が働く素地ができてきました。このタイミングで債券だけを売ることは決してしないでください、と基金の方にお願いしています。
(2003.08.26)
リスクプレミアムの低下とヘッジファンド
現在世界の資産運用業界で「株式のリスクプレミアム」が問題になっています。昨年の世界的株式暴落を受け、潜在的なリスクプレミアム(その株式が自国の短期金利に対し要求するプレミアム)を見直す動きが活発化しています。非常に大雑把に言ってしまうと、コンセンサスとなりつつあるリスクプレミアムはおおよそ3~5%の間という感じを受けます。暴落以前に比べると半減に近い数値となっていることに驚きます。
理論的根拠の話は別の機会にするとして、株式の期待リターンが短期金利に対して3~5%しかないとすると、マーケットリスクを取らないニュートラル系のヘッジファンドの期待リターンとほとんど変らなくなります。株式のリスクプレミアムが下がる時には、ヘッジファンドの期待リターンも一緒に下がるのでしょうか?影響を受ける運用手法があることは間違いないですが、ヘッジファンド全体としての影響は軽微であると考えられます。
市場環境が好転しているにも関わらず、ヘッジファンドへの資金流入が続いている背景には、このようなことも関係しているのかもしれません。
(2003.08.25)
いつもビリ?
当社に登録いただいている株式ファンド全体をユニバースとして、個々のファンドのパフォーマンス順位を時系列で追っていくと、いろいろなことがわかります。昨年までTOP10から落ちたことのなかったのにこの数ヶ月は下から数えて何番目を低迷しているファンド、スタイルバイアス通りに順位を上げ下げしているファンド、どんな相場つきでも上位20%からはずれないファンドも中にはあります。ランキングの急激な変化には必ず原因があるわけで、その原因が明確で改善の方向性がみえている場合は、あまり心配はしません。
ただ最も判断に窮するのは、常に下位20%あたりを低迷しているファンドです。この3年間は、基本は下げ相場でしたが、短期的ではあれ上昇場面もあり、スタイルの強弱間もいろいろだったと思います。現実に成長株に傾斜しているファンドの順位が一概に悪いともいえません。市場の様々な変化に関わらず、恒常的に順位が下位にいるというのは正直にいって理解しがたい現状です。「常に勝てる運用者を選ぶことはむずかしいが、常に負ける運用者を排除することは出来る」という言葉を思い出しています。
(2003.08.22)
電子の世界のリスク分散
『鍵を換えても換えてもピッキングの被害が減らない町がありました。鍵を換えてしばらくは空き巣も減るのですが、1ヶ月もすると町中でピッキング被害が発生します。業を煮やした町長が近隣町村から様々なドアを取り寄せて、一軒一軒異なるメーカのドアを取り付けたところようやく空き巣の被害は収まりました。めでたしめでたし。』と、別に空き巣の話ではなく、コンピューターウィルスの話です。残念ながら現状のコンピューターの世界では、ドアメーカーを換えるほど簡単に「基幹ソフト」であるM社製「Windows」を取り替えることはできません。今、全世界の情報ネットワークの生命線を握っているのが、M社というたった一つの民間企業であるという事実に、改めて戦慄を覚えます。最近になって公共機関などで「Windows」ではない基幹ソフト導入の検討も行われるようになったと聞きます。電子の世界でもリスク分散の重要性がようやく認識されつつあるようです。
(2003.08.21)
悪材料に反応しない…
イラク戦争は本当に終わったのだろうか?米英の対イラク交戦に最後まで反対した国連本部の爆破はあまりにも理不尽で悲しすぎる。こんなことが起きるのなら、この後まだ何が起きてもおかしくないとさえ思える。
それでも株価は上がる。イラク戦の早期終結こそが今回の株高のきっかけであったことなどもはや誰も覚えていないかのように。
異常な冷夏も、何千人もの命を奪った欧州の酷暑も、そして数千億円の損害を出し史上に残るであろう大停電も、今の市場の勢いがすべてを飲み込んでくれている。逆に言えば足元をきちんと固めず勢いだけで上がっているとも見える。悪い材料ではきちんと下がり、よい材料ではしっかり上がる。そんな相場にならなければ新規資金の流入はあまり期待できそうもない。
(2003.08.20)
大停電が教えてくれたこと
今回の北米の大停電がとりあえず回復し、米国市場は何事もなかったかのように機能し始めました。今回の停電に関し様々な論説がマスコミに取り上げられていますが、その中で最も気になる視点は、「今回の停電の原因の一つは電力の使いすぎにあるのではないか?」という指摘です。実際のところは調査結果を待たないとなんともいえないのでしょうが、野党はブッシュ政権に対し、省エネ政策に政府が真剣に取り組まなかったツケが回ったのだと、激しく非難しているといいます。
資源もエネルギーも物品も消費することが経済の活性化につながるとでも言うような、現代社会の風潮に確実に一石が投じられたとするのなら、大停電による1500億円とも言われる経済損失も高い授業料だったと思わなければいけないのかもしれません。
(2003.08.19)
天候不順
(グラフをクリックしてください。拡大されます)
左のグラフは東京都の月間平均温度です。1965年来で冷夏を記録した主な年は、1976年1980年1993年、そして今年、となります。今年の7月の日照時間は1965年来史上二番目の低日照を記録しています。
記憶に新しい、1993年の冷夏では6月に経済企画庁が景気回復宣言をしたあと、撤回を余儀なくされました。
一方1980年の冷夏が景気に直接的な影響を与えたという記述はあまり見られません。また、今年に入り地方銀行経由で小口に販売された天候デリバティブを使った保険が、思いの外効果を発揮しているとも言われており、この天候不順が景気後退を招くかどうかはまだわかりません。でもやはり心配です…
(2003.08.18)
暑中お見舞い申し上げます
大阪に来ています。台風も来ています。台風に先に行ってもらおうと、一晩待ったのですが起きてみるとなぜか敵はまだ頭上に…しかたないのでご一緒に帰京することになりました。
冷夏に地震に台風と、誰か天の神様を怒らせるようなことをしましたか???
景気への影響を真剣に心配する声が高まりそうです。
来週は夏休み週間ということで、「思いつき」もおやすみさせていただきます。
急に暑くなるかもしれません。どうぞご自愛ください。
(2003.08.09)
新しいTOPIX
TOPIX1000という新指数の発表が東証から行われました。一部上場銘柄のうち、過去3年の取引量と時価総額の多いものを基準に1000銘柄を選んだ指数だそうです。東証のホームページには、このTOPIX1000のセールスポイントが色々書いてあります。年金運用に適しているとか、トラッキングエラー管理がしやすいとか、TOPIX1000をベンチマークとした運用でもTOPIX先物でのヘッジが可能であるとか…読んでいて思ったことは、「大きなお世話」。TOPIXであれTOPIX1000であれ、それをどう利用しどう評価するかは、利用者に任せるべきです。取引所の役割は上場しているすべての株式に健全な流動性を与え、迅速かつ正確な売買を執行することであって、一部の機関投資家の利便性に迎合することではありません。インデックスを売って利益を得ている民間機関とは違うのです。年金のベンチマークを誘導するような表記を取引所が行うことには大きな疑問を感じます。
(2003.08.07)
いずこも同じ
あちらこちらで米国の住宅金融機関への投資スタンスについて文句を言っているので、またかと思われそうですが…
米国のマスコミの論調も含め
①住宅投資は今の米国経済の根幹を支える最重要産業であり、②住宅金融会社の発行する債券残高は国債を超え、③債券は法的にはともあれ既成概念としては政府保証と同等に扱われている。
④だから住宅金融機関は他の企業とは別格であり決して破綻しない。
というロジックが、10年ほど前我が国の発券銀行(金融債を発行している銀行)に対して用いられたものと同じであることが気にいらないのです。住宅投資をゼネコンに換え、MBSを金融債に換えてみれば、今はなき興長銀を思い出さずにいられません。もちろん不良債権の有無という点では、根本的な違いはあります。ただこういった奇妙な解説が結局正確な判断を遅らせ、被害を大きくする可能性があるということを忘れてはいけないのではないでしょうか。
(2003.08.06)
社会的責任投資(SRI)
社会的責任投資についての調査や論文が多数でていますが、その中で6月末に環境省のまとめた「社会的責任投資に関する日米英3か国比較調査報告書」は、SRI入門としては大変わかりやすく参考になると思います。『金融のグリーン化』という、証券投資の現場ではまだあまり使われていない単語も出てきます。この報告書のなかでも触れられていますが、SRIを「パフォーマンスの犠牲を許容しても社会正義を追及するツール」と位置づけてしまうと、年金運用においては受託者責任に抵触する懸念を否定しきれなくなります。一方でSRIがパフォーマンスに貢献するという検証にはまだ時間がかかるでしょう。SRIの規模が拡大し株価に影響を与えるようになるまでの間、パフォーマンスと社会正義はどのように両立させていけばよいでしょうか?悩ましい問題です。
(2003.08.05)
外貨比率
3-4年前から昨年まで当社が組む資産配分案は、信託銀行や他のコンサルティング会社のものに比べ、外債の比率を10%近く高く設定してありました。この目的は債券価格の上昇というよりも、外貨を保有することをかなり意識したアロケーションです。98年の金融危機以来、国内市場のテーマが「信用不安と不良債権処理」という特殊なものに偏っていたため、日本の株式を売る、のではなく「日本を売る」「日本を買い戻す」という投資行動がグローバルに起き易い状況が続いていたのはご存知の通りです。こうした環境下では国内の株式と債券の間での逆相関が利きにくくなる傾向になるため、国内資産のヘッジとして外貨を持つことが大変有効でした。
今後株式が上がるかどうかは別として、5年間続いた信用不安が一応の峠を越したとするなら、資産配分の中で外貨の担う役割は低下していくと考えられます。「日本売り」などという悲しい言葉と決別できそうであれば、少し外貨比率を下げることも検討しなければいけないと思っています。
(2003.08.04)
生き残り
「某経営コンサルタント会社の分析によると、資産運用業界の寡占化は続き、資産額TOP5の会社だけで世界の運用残高の8割以上を占めることになる」との記事を読みました。そういえば今から7-8年前、国際的規模のインベストメントバンク(総合証券会社)は、将来的にはTOP5社しか生き残れない、と言われていたのを思い出しました。そのとき名前の挙がった5社が今順調かというとそんなことはありません。当時の拡大路線のつけは大きく、合併や無理な人材獲得で膨れ上がった人件費を削減するために、延々とリストラを続けているのが現状です。金融商品全体がブローカレッジであれアセットマネジメントであれ、非常に効率化し鞘が薄くなっている状況下で、資産規模や取扱量の拡大がそれに伴う組織の肥大化を吸収するだけの収益を賄えなくなってきています。小規模な運用機関であっても勝ち組になれる可能性は充分にあるのではないでしょうか。
(2003.08.01)