2024年03月の思いつき


時代を追うのではなく、時代を組み込む運用

ESGとか低PBRとかインパクト投資とか、信託や投資顧問会社で、時代の要請の変化に伴った異なるファンドが立ち上がるのが不思議で仕方ありません。

企業がガバナンスを重視することも、低PBRを解消することも、投資家が投資を通して社会貢献をすることも、どれも当たり前のことで、特別な投資テーマとして扱うようなものであるとは思えないのです。

各社独自の投資哲学に基づいた運用プロセスの中において、こうした時代に即した投資目線を自ずと組み入れていくからこそ、投資哲学というものが時代を超えて醸成されていくわけで、社会的目線の変化に従って次々と新しいファンドを立ち上げるような運用機関には100年経っても運用哲学など根付かないでしょう。

自ら主張できる運用哲学を持った運用機関。今から作り初めても100年掛かります。でも始めないことには変われない。

運用に力を入れるということは、目先のトレンドを追って薪をくべることではなくて、胆力と資本力を持って雨風に強い灯火を育て守り続けるということです。

そういう発想や気概が、今の日本の運用機関の経営層から全く伝わってこないことはとても悲しいことです。

寺本名保美

(2024.03.28)



勘違いでないのならOK

日銀のマイナス金利解除、FRBの金利据え置き、いずれも結果だけみればサプライズはありませんでした。

ただ、その後の市場の反応については、日米共にやや疑問が残ります。

日本についていえば、日銀総裁の使用した「普通の金融政策」という言葉の重みを市場がどの程度理解しているのか。

米国についていえば、2024年に3回の利下げが問題なのではなく、FRB理事の内1人を除いた略全員が2024年末のFFを4.75%以上と想定していることが、本当にハト派なのか。

日本が2%に向かって金利が徐々に復活し、米国で4%台の短期金利が維持されるということについて、私は経済にとってプラスであると考えています。
もし今の市場が私と同じような考えにおいて堅調であるのなら、それはとても心地よいことではあります。

でももし、足元の市場の反応が、金融政策に対する極めて楽観的な見通しに基づくものであるのなら、本当の反応はポジション調整が一巡した来週以降に出てきます。

日米の金融政策についての市場の反応が、勘違いではなく、このまま継続してくれるなら、それに越したことはないのですが。

寺本名保美

(2024.03.21)



金利復活への期待

先週金曜日、弊社の資産運用セミナーを無事開催することができました。年度末の本当にお忙しい中、大変多くのお客様にご参席いただきましたこと、心より御礼申し上げます。

今回は元日本銀行金融政策・金融市場担当理事であり、現在ちばぎん総合研究所代表取締役の前田栄治様をお招きし、「金利は本当に復活するのか」というテーマでお話いただきました。あまりにもタイムリーな話題ではありましたが、とても具体的にご説明をいただき、私を始めご参加の皆様の視界が少し開けてきたのではないかと感じております。

後半は私から「インフレと金利を味方につける投資戦略」と題し、金利の復活は怖くない、というお話をさせていただいております。

今日から日銀の政策決定会合です。
「マイナス金利の解除」ではなく「金利がある世界への第一歩」が始まることを「期待」しています。

寺本名保美

(2024.03.18)



本日は定例セミナーです

おはようございます。
本日は34回目の定例セミナーの開催日のため、午後は事務所を閉めさせていただきます。

今回のテーマは皆さまが「超苦手」な「金利」です。

眠くならないように、会場を冷やして、、、ではなく、パワー全開で、お待ちしております。

寺本名保美

(2024.03.15)



再分配できるだけの国力

バイデン政権の出した来年度予算教書は、拡大している所得層間の経済格差を縮小させる、という意思が明確に打ち出される内容になっていると思われます。

キャピタルゲイン課税や一定の富裕層に対する最低税率の引上げ、また米企業の海外利益に対する課税やOECDの定めた過少課税利益ルールの採用など、個人・法人を超えて広範に増税の網が掛かります。

もちろん、今の議会運営において実現性が極めて薄いということは前提としてあるものの、予算というものはこのぐらい目的意識をはっきりと示すものである、という点においてはとても参考になる内容です。

物価の上昇によって拡大している所得格差は、比較的労働環境が好調さを維持している米国においてでさえも、社会の安定性という観点からみればそろそろ限界に近付いてきています。ここで一旦国民のガス抜きが必要であることは間違いありません。

大量の富裕層と成長余力のある大企業を豊富に抱えている米国だからこその政策であるとも言え、こうした政策を打ち出せるだけの国力があること自体が米国の強さを表しているともいえそうです。

日本についても、富裕層というよりは、大企業労働者とそれ以外、という分断が、この1年で異常な速さで拡大しているように見えます。一般国民のガス抜きが必要であることは米国同様であるものの、ここで法人税増税に転換することは漸く設備投資が復活してきた現状においてはまだ時期尚早でしょう。

米国のような再分配政策を打ち出すには、まだまだ国力全体の蓄積が必要です。

寺本名保美

(2024.03.12)



どうでもいい?

米国の大統領選挙の経緯をみていて、米国国民にとって大統領への、もっと言えば政治というものへの期待値が極端に低下した結果としての、トランプ氏対バイデン氏という構図が出来上がっているのかもしれないと思い始めました。

大統領選挙がお祭りであることは今に始まったことではないにしろ、今回ほど緊張感のない予備選というもの珍しいような気がしています。

各種大手ネット産業がプラットフォーム化し、社会構造を変えていく中で、生活の中における政治の役割というものがコロナ禍以降どんどん希薄化しています。

トランプ氏がよいわけでもバイデン氏がよいわけでもなくて、「どうでもいい」からこその「アラ80」対決なのかもしれません。

もちろん、国外の外交・防衛・貿易の相手国にとっては、どうでもいいどころではない、自国の命運を左右されそうなほど重要な大統領選挙であるわけで、できることなら米国国民の皆様にもう少し世界の中の米国という自覚を持って大統領選挙に取り組んでいただきたいと切に願っています。

寺本名保美

(2024.03.06)



漸くスタート地点

ひと昔前、原油が無ければ社会経済は成り立たなかったように、今、半導体が無ければ我々の生活は一日たりとも成り立たなくなっています。

その半導体の製造拠点が台湾周辺地域に集中していることが、世界各国にとって見過ごすことができないリスクであると認識されて以降、世界各国に半導体工場が作られるようになりました。

日本における大規模半導体工場の新設は、その世界的な流れの一環に過ぎません。今の半導体の事業展開を、日の丸半導体の復活だの、日本の主要産業は半導体になるだのと囃している人が居るのであれば、それはとても危険な誘導だと思います。

半導体産業はとても重要です。全ての産業に不可欠なこの心臓部を内製化する道筋が日本おいてできたことは、日本の製造業全体にとって非常に大きな一歩であることは間違いありません。

だからこそ、次はこの内製化される半導体を使って、日本の製造業としてどこで勝負をしていくかの道筋を考えることがとても重要なのだと思います。

今のところ株式市場を見る限り、半導体の次が見えているとは言えません。半導体関連株だけ買われている中での日経平均4万円越えに、意味があるとも思えません。

漸くスタート地点に戻ってきた日本の製造業に、向かうべきゴールが見えているのか、まだ確信はありません。

寺本名保美

(2024.03.05)


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