2023年12月の思いつき


破壊から突破へ

本年一年大変お世話になりました。

2023年は良くも悪くも「破壊力」のある一年でした。

2024年は、この破壊力を突破力に転じることができるかどうかが勝負となると考えます。

デフレ環境という、みんなで一緒に低空飛行をしている社会は、終わってみると意外に心地よく、インフレ環境でそれぞれが様々な高度で飛行を始める社会は、始まってみると意外に心地が悪いものでした。

企業や技術が破壊を突破力に変えて滑空するなか、取り残され分断された社会には、生活基盤が破壊されていく恐怖だけが募っています。

景況感は悪くないのに、治安が悪化する、というあまり見たことがない状況が、世界のあちらこちらから聞こえてくる年の瀬となりました。

さて2024年。突破された推進力に押されていく経済については、あまり心配していません。一方でまだ破壊された段階で行き止まっている社会については未だ突破の糸口すら見えていないのが現状です。

エンジン全開しつつ、周期的に突風にあおられるような、あまり乗り心地の良くないフライトとなりそうな一年ではありますが、安全運航を第一としたナビゲーションに努めたいと思っております。

本年も大変お世話になりました。
2024年も相変わらずのご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。

寺本名保美

(2023.12.28)



身構えた一年、備える一年

身構える2023年がもうすぐ終わり、備える2024年が始まります。

金利環境も地政学環境も社会環境も、一斉に動き出した2023年でした。

大きな地殻変動の気配にオロオロしたり、楽観したりと、足元の定まらないまま1年が過ぎました。

良くも悪くも変化に対し正面から向き合うことなく過ごした2023年に対し、2024年は地殻変動後の世界を前提とした投資環境に向かって現実的な備えを行う一年となるでしょう。

一定のインフレ環境は継続しお金使い放題の超緩和環境に戻ることおはなく、以前の東西問題と南北問題を合算させたような米中冷戦は世界の政治経済に複雑な緊張感を創出していきます。技術のイノベーションは止まることなく政府や国民生活との融合と干渉を繰り返すでしょう。

この不可逆的な変化を所与のモノとして認めるところから2024年の投資戦略は始まると考えています。

そしてこの悪いことばかりではなく、良いことばかりでもない、という環境そのものも、これまで危機とゴルディロックスの繰り返しだった過去2四半世紀からみると、大きな変化であると言えるのかもしれません。

身構えた次の一手は守りなのか攻めなのか。2024年は次の10年を生き残るための戦略を練り備える一年になりそうです。

メリークリスマス!

寺本名保美

(2023.12.25)



年末の過ごし方

先週来の米欧日による金融政策決定会合が終わり、結果としては穏やかな年末を迎える準備が整ったという感じでしょうか。

米国については過去1年半続いてきた利上げステージが恐らく終了するであろうことを確認し、欧州については利上げステージの終了への確信が持てないものの小休止することを選択し、日本については先行して利上げをしてきた海外景気の影響を見計らってからの判断でも遅くはないというのが結論だったように見えます。

次の展開を先読みするのは市場のサガであり、否定するものではありませんが、現在の中銀首脳陣が直近の経済データ重視を主張している限りにおいて、前のめりな予想や期待は外れるリスクの方が大きいような気がします。

中銀が次にどうするか、ではなくて、今の景気の実態をどう見るか、に議論を集中させた方が効率がよいように思っています。

日本にしろ米国にしろ、景気を反映した株式実体なのか、単に金融相場の中でのオンオフをしているだけなのか、年末年始を挟んで冷静になって少し考えてみることが必要なのかもしれません。

寺本名保美

(2023.12.19)



一足早いクリスマス?

昨日のFOMCの結果ですが、来年0.25×3回の利下げ予想が前提とされているととるか、来年0.75%程度の利下げしか想定されていない、ととるかで、反応は随分違いそうです。

ドットチャートからは、来年利上げを予想している理事がいなくなったこと。そして9月時点では約半数近い理事が来年末の5%台維持を想定していたのに対し、今回はその中心が4.25%から4.75%の間に落ち着いてきたこと。が解ります。

そういう意味では、インフレがコントロールできつつあるという自信がやや高まってきていることは確かかもしれません。

とはいえ、米国短期金利が当面4%台後半に留まるということを前提とした時、10年金利が4%を割れて低下することにどこまでの説明力があるかはやや疑問であるのも確かです。

足元での景況感が回復傾向にある中、インフレ抑制下の景気回復といる絵に描いたようなソフトランディングシナリオが、単なるクリスマスイルミネーションでないことを期待するとしましょうか。

寺本名保美

(2023.12.14)



日本政治のソフトランディング

米国の金融政策に一喜一憂している日本の株式市場ですが、今回の自民党の混乱の影響をあまり甘く見ない方がいいような気がしています。

海外投資家がこの1年「相対的に」日本株をプラス評価していた最大の理由は恐らく「政治的安定」です。

選挙次第で大きく右・左に振れそうな欧州や、秩序と無秩序の両極で右往左往する米国など、どこの国もどこの地域も政治的な不安定さが市場の最大リスクとなっている昨今において、首相が誰であろうとも自民党による良くも悪くも政策の振幅の小さい政治が続くであろう日本が投資家に「相対的な」安心感を与えていたのは確かです。

今回の事象がこの「相対的な政治的安定」を揺るがす事態になるかどうかは未だ解りません。今のところそのリスクは小さいと判断されているからこそ、今日の日本株は米国に追随して大きく買われています。

日本の政治がこのままソフトランディングできるかどうか、注意深く見ていく必要がありそうです。

寺本名保美

(2023.12.11)



学びの上の楼閣か

観光産業に期待した大規模商業施設の建設が日本各地で進んでいます。

ホテルや店舗だけでなくアミューズメント施設の建設も続々と発表されていますが、その多くがインバウンドを期待した超高級路線をうたっています。

コロナ禍が終わってようやく1年です。次の感染症のことを考えたくはないですが、それでも規模の大小はともあれ、今後10年以内に世界の何処かで何等かの感染症パニックは起きるということを前提に、全ての経済活動は行われるべきだと思っています。

逆に言うなら、あらゆるビジネスモデルにおいて、10年に1~2年の周期で日常行動や海外渡航が制限されるような環境が発生したとしても耐えられるかどうかの精査がなければ、持続可能性は担保できないと考えます。

10年などあっという間です。一つの痛みから学べるものだけが生き残ることができる時代です。今の日本のインバウンドブームが学びの上に立ち上がっているのであれば、全く心配はしないのですが。

寺本名保美

(2023.12.05)



ささいな火種

先週金融市場で起きたイベントで、一番気になるのはオーストリアの大手不動産会社の破綻でしょうか。

貸し手の多くがドイツの中小金融機関であったこと、そしてスイスの富裕層向け金融サービス会社が、ストラクチャーPDのポートフォリオの内50%を当該グループに集中させていたことが明らかになっています。

2024年の懸念材料の幾つかが、上記の数行に内包されているように思っています。

為替市場でのユーロロングの偏りは、未だに大きく修正されている様子はなく、むしろ米国の利下げモードで積み増されています。

今はまだ市場で大きく取り上げられていないものの、リスクが顕在化するきっかけというものは、こういった表面的には些細な話題から始まるものであるということを、認識しておく必要があると思います。

寺本名保美

(2023.12.04)


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