2022年05月の思いつき


政治対国民

7月の参議院選挙が近づいてきました。

今回の選挙。各政党・候補者ともに、且つてなく難しい選挙になりそうな気がしています。

例えば、自民党の公約案が聞こえてきていますが、日本の選挙において「外交・安保」は諸刃の剣。

経済政策の目玉にしようとしている「新しい資本主義」や「一億総株主」といった、金融市場に軸足を置いたキャッチフレーズが、どれだけ幅広い層に響くのか、かなり疑問が残ります。

人に対する投資という概念もまだまだ社会的な認知度は薄く、「投資をするなら金をくれ」と言い返されそうな気配です。

国際的な政治・経済の中において、今の日本が抱えている問題の深刻さを有権者に理解してもらう必要があるのでしょうが、悪戯に不安心理を煽っても票には結びつかないでしょう。

国内外における環境が激変してから、まだ数か月。政治の現場が感じている危機感と国民の認識との間には大きなギャップがありそうです。

政党間における論点の違いより、政治と国民との間における論点の違いの方が際立つ選挙になれば、結果次第ではこの国の政治への信頼を失いかねません。

今回の参議院選挙。株式市場での注目度は今のところ高くなさそうですが、意外に終わってみると景色が変わっている、かもしれません。

寺本名保美

(2022.05.31)



ダボス会議の変化

今年のダボス会議の主要テーマは以下の9つでした。
①ウクライナ侵攻
②グローバル経済-アフターコロナの課題・債務・インフレ・雇用・貿易
③グローバリゼーションの未来
④二つの危機:食料とエネルギー
⑤気候変動と環境
⑥ビジネスや企業の果たすべき役割
⑦健康問題
⑧職の未来
⑨テクノロジーとメタバース

2021年1月のオンライン開催時のテーマはコロナ禍に係ることと、各種格差に係るテーマ、そして環境問題でした。
コロナ禍で中止になった2021年8月の年次総会で予定されていたテーマはグレートリセットとステークホルダー資本主義。

こうして比較してみると、この一年、というよりもこの数か月で、世界が抱える具体的な課題が大きく変質し噴出したことがわかります。

昨年までは、一旦成熟期を迎えた資本主義やグローバル経済を如何に持続可能なシステムとして昇華させていくか、という未来志向な構造改革を意図されたいたのに対し、今年のテーマを見ると資本主義やグローバル経済の存続の危機や、社会活動の基本となる食料やエネルギーといった経済成長以前の課題に、視点が移っています。

これを停滞や後退と表現することが正しいのかどうかは別として、世界経済のスピード調整から、世界経済の舵取りの方向性へとテーマが変わってきているのは確かなようです。

寺本名保美

(2022.05.27)



個人消費から設備投資へ

これまで、景気のエンジンの主体は個人消費にありました。

記憶に新しいところでは中国経済が典型ですが、国興しのインフラ投資が終わり、インフラを活用した産業新興が起き、その後の経済を支える主体は個人消費となります。

戦後の先進国、それに続いた新興国、そして中国と、何れも足元までは個人消費を如何に刺激するかに、政府の政策は集中していました。

さて、ここからの経済。

エンジンの中心が、インフラから設備投資へのステージに、逆戻りするかもしれません。

エネルギーの自給に向かっての設備投資。各企業による調達部品の内政化による設備投資、そしてスマート社会への設備投資。

金利が上がり、株価が下落し、不動産市況が悪化し、個人消費が低迷したとしても、経済全体でみた需要の中心が設備投資であるのなら、景気の先行きに対してそれほど悲観的になる必要はないかもしれません。

だからこそ、インフレも金利も、まだまだ上限の目途が立たないとも言えます。

先入観や過去の水準にだけ囚われていると、大切なことを見失います。

寺本名保美

(2022.05.24)



UFO!

米国の下院で50年ぶりにUFOについての公聴会が開かれたという話。

UFOの存在可能性が高まっているかどうかではなくて、米国議会において大気圏外への興味が高まっているということに注目しています。

宇宙関連技術は、唯一米国が世界一と言い切れない分野です。

ロシアが自国のコロナワクチンに「スプートニク」と名付けたのも、1950年代にソ連が人類初の人工衛星打ち上げに成功し米国を震撼させたスプートニクショックに準えて自国技術の高さを国内外誇示したものとみられていますが、今のロシアにとって宇宙開発分野が対米戦略上、今尚戦える分野であることを示したかったのかもしれません。

米国大統領が人類の脳の仕組みを完全に解読することに予算をつけて数年後、人工知能が劇的に進歩したように、米国政治の本気は技術と経済に劇的な変化をもたらします。

今回のUFO議論が今後の技術開発の方向性にどのような影響を与えていくのか、大きな興味を持って見ていきたいと思っています。

寺本名保美

(2022.05.20)



平和ボケ

日本について「平和ボケ」という人がいますが、基本的にソ連邦が崩壊して以降この30年の世界経済は、正に平和ボケを前提に拡大してきたのだと、今改めて認識しています。

平和ボケからの目覚めは、軍事的中立を維持してきたフィンランドとスウェーデンがNATOへの加盟を望み、19世紀から軍事的政治的中立を国是としてきたスイスがNATOとの軍事協力を志向し始めたことで、一気に現実味が増してきました。

アメリカを始めとして、技術大国ではあるものの軍事大国には至っていない中国を仮想敵国と想定していた中において、いわばオールドファッションな軍事大国であるロシアが敵国として狼煙を挙げたことの衝撃度が、現代の国際秩序にとっていかに大きなものであったのかを、北欧やスイスなら対応から窺うことができます。

一旦均衡が破られてしまった国際秩序は、恐らく多方面へとハレーションを起こしていくことになるでしょう。世界経済が再び平和と国際協調の恩恵を受けられるようになるには、何十年という月日が必要になるかもしれません。

戦争という究極の破壊活動を前にSDG’sの掛け声は虚しく、ミサイルや爆弾の投下による二酸化炭素の排出量はいかほどなのかと考えることすら不謹慎に思えなくもありません。

グローバル経済という概念そのものが、もしかすると平和ボケの産物だったのではないかと思えば、各国企業の基本戦略も根本から考え直さなければいけなくなるでしょう。

今の金融市場の調整は、我々に一旦立ち止まってスタートラインに立ち戻るための時間を与えてくれているのかもしれません。

寺本名保美

(2022.05.17)



闘う紙幣

WSJのオピニオンに掲載された、ロシアに対する有効な経済制裁は、米国の100ドル札の廃止をちらつかせることだ、という記事を興味深く読みました。

国の年金制度などを信用していないロシア国民の多くは、米国の100ドル札をタンス預金しているそうで、その金額は2019年時点で約4兆円規模になっていると推測されるとのこと。

元々、100ドル札の約8割は米国外にあるので、ここで米国政府が高額紙幣の流通停止を検討することは、国内的には特に問題はない一方で、ロシア国民にとっては非常に大きな揺さぶりになる可能性があると書かれています。

数年前にインドにおいて高額紙幣が一斉に廃止されたことがありました。
マネロンや、地下経済に使われやすい高額紙幣については、各国共に将来的な廃止の検討がなされているとも言われています。

紙幣の価値ではなく、紙幣そのものが、戦いの道具となる時代。

信じられるのは現金だけだ、などというセリフ回しも、今は昔となりつつあります。

寺本名保美

(2022.05.11)



均衡点

今の債券市場を見ていると、市場参加者と中銀とのコミニケーションが全く成立していないように思えてなりません。

今回のFOMCでの利上げが、0.75%ではなく0.5%であったことには、然程大きな意味はなく、大切なことは最終的に金融当局が目指す金利の着地地点がどこにあるのかです。

株式市場に理論値を求めることは困難であるかもしれませんが、金利水準や債券利回りには理論値を定めることができます。

途中経過はどうであれ、金利というものは、必ず経済にとって影響が中立化される、均衡水準が存続するからです。

中銀と債券市場参加者とのコミュニケーションは、通常この均衡する中立水準よりも引き締め気味か緩和的か、またはこの中立水準に向かうまでの時間と経路についての、ディスカッションを行うことで成立します。

しかしながら、現在債券市場においては、この中立的な均衡水準そのものが、動く可能性があると中銀が主張しているのに対し、市場側はあくまでも過去10年に形成されてきた低インフレ化の均衡水準に頑なにしがみ付いて離れようとしていません。

基軸の居所を模索している中銀と、従来の基軸からの距離感だけで物事を測ろうとしている市場との間の乖離は大きく、同じ土俵に立つことすらできていないように見えます。

こうした、中銀と市場とのミスコミニケーションは、市場のボラティリティを拡大させ、不安定な状況を悪戯に長引かせます。

リーマン後に総入れ替えとなった債券市場のプレイヤーの経験値の低さが、今年の金融市場全体にとって大きな災いの種とならなければよきのですが。

寺本名保美

(2022.05.09)



ゴールデンウィークのお知らせ

ゴールデンウィークです。

リモート中心だと、オンオフの切り替えが難しいと感じてきたこの数年ですが、今後どういう形であれ、リモートワークがゼロにはならないという環境を考えた時、個人においても組織においても如何にしてオンオフをクリアに作っていくかは工夫しなければならない課題だと思っています。

現在進行形のメタバース空間にオフィスを設定することのメリットは、そこでリアルなオンを体感することではなくて、そこから離れるという行動によって、リアルなオフを体感できるところにあるような気がしています。

色々な先端技術を活用しての、新しいワーキングモデルについては、弊社も今後積極的に試していきたいと思います。

とはいえ、現状は、まだまだアナログにオンオフを作ることが大切なので、今週金曜日は全社オフとさせていただきます。

外部環境は色々ありそうですが、一喜一憂しないためにも、今週は気持ちを落ち着かせる週にしましょうか。

寺本名保美

(2022.05.03)


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