2022年01月の思いつき


横の広がり

金融市場が急落した時、それが単なる下落かクラッシュかの分かれ目は、値幅ではなく広がりだと思っています。

例えば今の米国株がここから3割下落したところで、コロナショック直前の2019年12月末より10%以上も上に居ます。

コロナショック以降の過剰流動性相場の中で、高値掴みをした人は大勢いるでしょうが、それでも今回については、借金をしてまで投機に資金をつぎ込んだ、という話はあまり耳に入ってきません。

株式の含み益を原資に、他市場に触手を伸ばしていた個人が、追証の原資として、今後どうような資産の売却に走るのか。そしてその市場の流動性がどの程度維持されるのかが、米株急落後の回復力を占う一つの指針となりそうです。

2020年3月のコロナショックの際は、株式の損失をカバーするために世界の債券が幅広く売りに出されたものの、それ以上の損失の連鎖は起きませんでした。

米株のボラティリティにばかりを気にしていないで、視野を広くして潜在的な火元を探さなければいけないと思っています、

寺本名保美

(2022.01.27)



金融市場がみているロシア

ウクライナ国境での軍事衝突懸念が高まる中で、グローバルに金融市場のボラティリティが上昇しています。

金融市場は地政学リスクに対し、比較的寛容な反応を示す傾向がありますが、今回については少し様相が異なるかもしれません。

金融市場はウクライナが戦火となることによる、欧州域のエネルギー供給問題を懸念すると同時に、この状況がロシア経済の崩壊に繋がりかねないこと懸念しています。

ウクライナ問題が顕在化した昨年の11月以降、ロシアのCDSは1.5倍となり、株式市場は30%下落し、7回連続で利上げしたにもかかわらずルーブルはドルに対し10%以上の下落となっています。

米国等が本気で経済制裁に踏み切った時、ロシア経済が持つのかどうか、金融市場は疑心暗鬼となっているのです。

ロシア国内では昨年後半にデルタ株による深刻な死者数の急増に見舞われました。漸くピークアウトしてきた矢先、足元ではオミクロン株の感染者増が始まっています。

壮大な数の戦車を並べる時間とお金があるのなら、他にすることがありそうなものだと思うのは、ロシア国民も同じなのではないかとも思います。

経済が持つかどうか、異常の災難が、プーチン政権には降りかかる可能性もありそうで、それこそが米国がロシアを軍事衝突に向けて煽っているように見える理由なのかもしれません。

寺本名保美

(2022.01.25)



きな臭い一年

今回のウクライナを巡る米ロの対立については、どういうわけかバイデン政権がプーチン大統領を煽っているように見えるのは私の気のせいでしょうか。

元々バイデン大統領のモノの言い方が、やや上から目線の傾向があるので、バイデン大統領がプーチン大統領に話しかけるようなコメントを出せば出すほど、火に油を注いでいるように聞こえる、というのも一因ではあります。

とはいえ、欧州各国をも巻き込むこれほど重要な局面の展開が、バイデン大統領の表現力だけで動いているとも思い難いので、やはり国家対国家として、ロシアを軍事行動に踏み出させたい何等かの理由が、米国サイドにはあるのかもしれません。

米国が何を考えているかは別として、迷惑なのはどう考えても欧州各国であることは間違いなく、いつもながら自国の陣地から遠い地域で勝手に拳を振り上げる米国の覇権の誇示は本当に厄介です。

何よりも、これでウクライナが代理紛争の戦場となり内戦化することだけは、大国の責任において回避しなければならないと思います。

今年の世界は何やらきな臭い一年になりそうで、気が重いです。

寺本名保美

(2022.01.24)



英国、しっかり。

英国のジョンソン首相がコロナ関連規制の撤廃を表明したことについて、英国社会が世界に先駆けてウイルスの共生に踏み切った、と前向きに捉えてよいものなのかと、疑問に思っています。

自らの軽率さが招いた罷免要求をかわすために、必要以上に刺激的な政策をとっている可能性。

自らの軽率さが、国民の支持率を急落させたため、よりポピュリズム的な政策をとっている可能性。

あまりに軽率な首相に対し、国民の信頼が大きく低下してしまったため、行動抑制的な政策を続けても国民がもはや従わなくなってしまった可能性。

つまり、追い込まれて政策を投げ出した結果としての規制撤廃、であるとするなら、英国社会にとっても、国際社会にとっても、その結果が重要な意味を持つことになりますし、今世界が立ち向かっているコロナ禍との最終決戦において間違ったメッセージを発信することにもなりかねないとも思います。

不規則行動を続けるロシア問題もあり、ドイツは首相が変わったばかりで、国際社会における英国の役割が大きく期待されているにもかかわらず、英国トップまで当てにできないという現状は、金融市場にとっても決して好ましい展開ではありません。

なんとなく気分が重いのは、オミクロン株の感染爆発のせいだけではなさそうです。

寺本名保美

(2022.01.20)



金融政策から見えてきたこと

インフレ傾向の定着を阻止するために利上げを行う可能性を示唆している米国FRBと、インフレは定着せずデフレ回帰のリスクを示唆する日本銀行と、大きく判断が異なる要因は、賃金インフレにあります。

資源価格の上昇などを起因としたインフレが長続きしないことは、黒田総裁が指摘する通りですし、昨年までのFRBの主張も同じです。

今年になって、大きく展開が動いたのは、米国においては明らかな賃金インフレが始まったことで、政府が賃上げ目標を示さなければならないほどの賃金低迷が続いている日本とのインフレ環境には、大きな乖離が生じています。

足下の賃金動向の乖離が、日米の労働需給の差に原因があるのか、経営環境の差なのか、経営者マインドの差なのか。原因の分析なしに闇雲に政治が賃金アップを要求したところで、呼応するのはいつも通りお行儀の良い一部の大企業だけでしょう。

アフターコロナの金融政策が、計らずも日本経済の弱さを際立たせることになったようです。

寺本名保美

(2022.01.19)



自然には勝てない

史上最大の大噴火とされるのは1815年4月10日に起きたインドネシアのタンボラ山の大噴火です。この時世界の平均気温は1.7度低下したとされます。

最近では1991年にフィリピンのピナツボ山の噴火でやはり地球の気温が0.5℃低下し、その後1992年から1993年にかけて日本においても記録的な冷夏が発生しました。

外食のご飯が、軒並み輸入米に切り替わった、あの夏です。

今回のトンガ沖における海底火山の大噴火は、100年に一度という人もいれば、1000年に一度という、人もいて、実際のところはまだわからないものの、今後数年に亘って、地球経済に何等かの影響を与えることは避けられないのでしょう。

そういえば、今日の午後のWEB会議、参加者全員が、回線の調子が悪いと言っていました。ネットでは複数のキャリアでの通信障害の訴える投稿が上がっています。

今日の通信障害が大噴火の影響かどうかというつもりはありませんが、精密機器によって成り立っているデジタル社会というものの本質的なリスクは、サイバーテロではなくて、大噴火や大地震といった自然災害であることを、再認識しなければいけないのかもしれないと思っています。

寺本名保美

(2022.01.17)



ロシアと欧州

欧州からロシアにかけて、文字通り縦横無尽に張り巡らされているガスパイプラインの敷設図を眺めていると、これに関わる各国はこの地域の平和と安定に、如何程の努力と覚悟を積み重ねてきたのだろうかと考えてしまいます。

ワルシャワ条約機構の解体から、30年以上が経過しても尚、NATOとの陣取り合戦を辞めないロシアが何を守ろうとしているのかもよくわからないですし、この厄介な地域を経由して全体の6割もの量を輸入しなければならない天然ガス資源に、当面の発電エネルギーを依存しようとしている、英国や欧州各国の、危機意識もよくわからないです。

ロシアが天然ガス資源を始めとする資源の輸出国として、国家経済を成り立たせていくのであれば、最大顧客である欧州各国との関係は、もっと平穏に保つべきであるし、安定的な供給源として政治的な不安を抱える相手から過半を輸入しなければならないような資源を、国家のエネルギー政策の根幹に置くのはあまりにも無謀です。

あまりに長くロシアがウクライナ問題を引っ張るようであれば、欧州の天然ガス離れが始まるかもしれません。欧州各国が原子力発電に回帰しようとしているのも、対ロシアの潜在リスクを意識し始めた結果なのでしょうか。

寺本名保美

(2022.01.14)



予想は既に超えそうです

株式市場が注目すべきことは、自らの再任を審議する公聴会で、やや玉虫色的なインフレコメントに終始したパウエル議長の発言ではなくて、1.75%を超えた水準で高止まった米国の10年金利なのではないかと考えます。

この水準は、2020年1月のコロナショック前の水準であり、その時の短期金利は1.5%です。アナリスト予想するような年内4回の利上げが行われたとしても、政策金利は1%にしかならず、市場が織りこむ金利水準は、更にそれから2回程度の利上げしなければ、到達しません。

これを指して、市場の利上げ懸念が行き過ぎだという意見が今のところ主流ではあるものの、短期金利が1.5%になった場合の長期金利の居所を、そろそろ株式市場は真剣に織り込み始めるべきなのではないかとも思います。

少なくても昨年末まで、株式市場においてコンセンサスとなっていた米国長期金利の水準は2%程度でした。

年初から既に1.8%台を見てしまった長期金利を見ていると、株式市場に浸透する楽観論が、かなり心配になってきました。

寺本名保美

(2022.01.12)



デフレマインドの脱却はまず経営者から

この数か月、日本の日用品や食品や、外食での値上げのニュースが多くなっています。

その度に聞こえてくるのが、企業努力も限界となり、というフレーズなのですが、この表現が日本のデフレマインドの象徴に思えてなりません。

大体において、値上げを我慢した結果、いきなり15%とか20%とか幅で値上げをするという感覚が、私には理解できません。

こういう値上げをされると、賃上げ2%目標などというものが、酷く無意なものに感じられてしまいます。

モノやサービスの値段は変動するものである、ということを、消費者に伝えてこなかったのは、戦後日本の経済界の大いなる失敗であると同時に、過当競争を即して価格上昇を抑制してきた日本の公正取引委員会の罪でもあると思っています。

日本のデフレ脱却には、値上げすることを謝罪しなければならないと思い込んでいる、日本の経営者マインドの変革からスタートする必要があるのではないでしょうか。

寺本名保美

(2022.01.06)



毒性は低い?

オミクロン株の第6波が到来しつつあります。

毒性が弱いこと、致死率が低いこと、といった良いニュースもあります。

一方で、世界的な感染爆発の可能性は、従来株よりも高いと言われていることについては、深刻に捉えるべきだと考えます。

これまでのコロナとの戦いで見えてきたことは、この戦いは自国だけでは完結しないということです。

ワクチンの行き届いた先進諸国では軽症で収まったとしても、多くの新興国が同じ環境にあるわけではありません。そして我々のサプライチェーンのスタート地点の殆どは、こうした新興国の労働者によって支えられていたという事実を、昨年のサプライチェーンショックが教えてくれました。

また、万が一、再び各国がロックダウンを伴う感染対策を選択せざるを得なくなった場合、各国政府がコントロールすべき相手はウイルスに加え、国民感情と治安が加わってくることになるでしょう。

オミクロン株の身体への毒性は低いかもしれませんが、社会全体に対する毒性は、意外に強力なものになるかもしれません。

寺本名保美

(2022.01.05)



青空と寒波

新年あけましておめでとうございます。

東京は抜けるような青空と、久しぶりに震えるほどの寒さの年末年始となりました。

さて2022年。

突き抜けるような青空に見惚れていたら、背筋が凍るような思いした、などということのないように、準備を怠りなく整えていきたいと思います。

本年も、皆さまの安定して資産形成の一助となるべく、日々精進して参ります。

引き続き、ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。

寺本名保美

(2022.01.04)


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