2021年10月の思いつき


内製化というトレンド

コロナ禍やその後のサプライチェーンショックなどを受け、様々分野における内製化の動きが活発化しているように感じます。

電機や自動車による半導体事業への展開。

ネットプラットフォームの物流事業への展開。

ユニークなところでは、回転寿司チェーンの魚養殖事業への展開。

今朝の日経新聞の見出しだけでも、こうした内製化の話題を拾うことができます。

潤沢な内部留保の活用先として、事業拡大ではなく、サプライチェーンの内製化という方向に舵が切られていることは、成長ではなく経営の質の安定を目指す今のトレンドを象徴している企業行動であるともいえそうです。

今後どのような分野において内製化が進むのか。日本の下請け構造にも大きな影響を与えるかもしれず、興味をもって見ていきたいと思っています。

寺本名保美

(2021.10.29)



値上げできなければ負け

ディスニーランドが、早朝の特定時間限定の特別入場券を発売すると発表しました。

集客人数が完全にコロナ前に戻ることは期待できないのであれば、差サービス内容を工夫して、顧客単価を上げるしかないという決断です。

コロナ禍が始まった当初から、コロナ後の社会活動においては、場やサービスのコストが明らかに上昇するということは想定できていました。

一つの場が集客できる人数が減少するのであれば、その場を利用する客は従来よりも高い単価を払う必要があります。

これまで1000人でシェアしていたサービスを500人でシェアしなければならないのであれば、一人当たりの単価は倍になるしかないのです。

ここから先のサービス業は、値上げできなければ生き残ることはできません。

緊急事態宣言が明け、本格的な淘汰はこれから始まります。

寺本名保美

(2021.10.28)



ドラマの世界ではないの?

Facebook の決算発表後の株価を支えた「メタバース」という単語。

あぁ、今シーズンの相棒に出てくるやつ。。。(意味不明の方はすみません。)

っていう程度の認識しかないので、あまり現実味を感じでいないのですが、要するに仮想空間の中に入り込んだ状態で、各種アクションが体験できること?

分散型台帳の概念が出来た当初から、最終的な社会のあり方としてイメージされていたものの、どこか夢物語のように思われていた仮想空間ですが、これが現実となるのであれはデジタルプラットフォームという言葉が、本当の意味での生活インフラに変わっていくことになります。

まだまだ先が読めない新事業ではありますが、とりあえず「メタバース」という単語を覚えておくことにします。

寺本名保美

(2021.10.26)



スナップショック

先週末に米国で起きたSNAPショック。

写真や動画のプラットフォームを提供した広告ビジネスを展開するSNAP社の売り上げが想定を下回り株式が急落した、というだけであればよくある話で済むのですが、今回はその理由が問題となっています。

今回の売り上げ減少が、今年4月からAppleが導入した新たな個人情報のトラッキングに係る自主規制によるものだとSNAP社が指摘したことで、Appleのこの規制がSNAP社だけでなくSNS広告ビジネス全体に大きな影響を与える懸念を市場が改めて認識することになりました。

Appleは一年間の猶予期間を経過した4月のアップデートから、この仕組みをiPhoneに導入していて、Facebookを始めとするSNS各社が業績への懸念を強く表明してきた中でのSNAP社の売り上げ減だったことが、この後に続く各社の業績への不透明感を高めています。

SNAPショックというよりはAppleショックといった方が良さそうな今回の問題。少し長引くかもしれません。

寺本名保美

(2021.10.25)



中期債の上昇

米国の金利が上昇しています。

10年国債金利では今年3月以来の1.7%を伺う展開となっています。

気になるのは、3年金利などの中期債金利が上昇している点で、3年金利の0.7%というのは、コロナショックが始まった2000年3月3日の米国利下げ直後の水準です。

実際、FRBはその後1%の追加利下げを行っていますので、3年金利についていえば既に1%程度の利上げを織り込んだ水準になっているということになります。

年内にあると言われている英国の利上げを皮切りに、主要国の金融政策も大きく舵を切ることになるのかもしれません。

コロナが収束しているうちに、できる限り金融政策を正常化しておかなければ、次に万が一再びロックダウンの様な事態が生じたとしても打つ手がありません。

各国の金融政策にとっては、非常に判断の難しい局面を迎えています。

寺本名保美

(2021.10.21)



iPhoneから見えてくる、米国の陰

米国で人件費の上昇が止まりません。

iPhone指数というものがあります。新型のiPhoneを購入するためにその国の平均賃金の何日分が必要か、を計測したものです。

日本やドイツや英国などが約10日必要であるのに対し、米国では約5日分で購入することができます。また、昨年の数値と比較しても、日欧では所要日数が増えているのに対し、米国では日数が減少しています。

もちろん、米国製品である以上関税の問題もあり、米国での価格設定自体が安いということも考慮する必要はありますが、昨年から今年に掛けての変化については単純に平均賃金の上昇率の差と見ることができそうです。

米国での労働コストの上昇の背景で指摘されているのは、大量の離職者の存在です。政府からの失業手当が多すぎた、ということも要因の一つのようではありますが、コロナ禍によって人生設計を見直した結果、というようなコメントも多く見られます。

労働参加率の低下による労働力不足を、高い賃金で呼び戻そうという今の米国の状況は、あまり喜ばしいことには思えません。

人生を見直した後に残るのが、今度は大量の失業者、ということにならなければいいのですが。

寺本名保美

(2021.10.19)



円安はプラスか?

ドル円が、2018年10月以来の、円安水準となりました。

原因究明については一旦横に置いておくとして、、今の日本経済にとって円安が心地よいがどうかについての考察は必要な気がしています。

円が相対的に弱くなれば、日本のモノは割安となり、海外のモノは割高になります。

輸出品であろうと、インバウンド需要であろうと、日本円で価格設定されたモノは買いやすくなるので、輸出や観光を主力産業とする経済にとっては、円は安い方が好ましいということになります。

一方で、海外で買い物をしようと、海外から輸入したものを国内で買おうと、円の購買力が低下しているので、海外からのモノを買うのは割高となります。原材料だけでなく、ある程度ドルとの連動性を維持している中国からの様々な輸入品のコストは上昇することになります。

また、現在世界的に活況を呈している企業買収においては、日本企業は海外からみると割安にみえ、海外企業への投資コストは高くつきます。

日本にとって、円安が好ましいかどうかは、日本が世界で買いものをしたいのか、日本のものを世界に買ってもらいたいのか。
このどちらのバランスが今の日本経済にとって優っているのか、またどちらのバランスを戦略的に重視すべきなのかに寄ります。

さて、現状。
中長期でみれは、円安歓迎経済であることには変わりはないかもしれませんが、短期的には原油価格や各種資源価格の高騰が懸念されている中での円安は、できれば避けたい環境です。

原材料価格や海外労働コストの増加で苦しくなった日本の技術産業を、海外企業に片っ端から買収されていくことも、望ましい展開とは言い難いものがあります。

とりあえずは、円安で株価は上昇するのかもしれませんが、120円を目指すような展開には要注意です。

寺本名保美

(2021.10.17)



期待しないで待ってます。

解散総選挙となり、各党の公約が出ています。

「一億総中流社会の復活」って、「一番じゃなければダメですか」と同じ位脱力するキャッチフレーズです。

米国で使われた「中間層の復活」と、似ているようで全く異なります。

名目や対象の違いはあれ、与野党共に主張する給付金にしても、一回限りの10万円で生活環境が変わるわけではありません。

どうせバラ撒くなら、毎月ナン万円を2年間、とかまで踏み込まないと意味はない。

世界を見ればスタグフレーションの影がチラつき始め、ここまで好調だった企業業績の先行きを懸念されるなど、コロナ禍以外でも問題は山積みです。

サプライチェーンの内製化。発電政策。国際的な労働コストの増加。国内労働力の再配置。生活インフラの老朽化。

大きくで重要で喫緊の山積み課題に、各政党がこれからの選挙戦で、どの程度踏み込んでくれるのか。

くれないだろうか。。。

寺本名保美

(2021.10.13)



新興国の債務危機

Bloomberg によれば、新興国関連ETFからの資金流出は、コロナショック以来最大の規模に達しており、IMFによれば低所得国の国家債務は史上最高額に達しています。

早ければ年内に英国が利上げに転じる可能性があり、主要国の利上げは米国の長期金利にとっても上昇圧力になるでしょう。

米国金利が上昇し、ドル高となれば、新興国の負債金額は膨らみます。

資源高の影響もあり、景気の立ち上がりが鈍い新興国経済にとって、史上最大の負債を抱えながらの対外債務の膨張は、一歩間違えると深刻な経済危機に繋がります。

コロナ禍による債務危機は決して新興国だけの問題では無いものの、体力のないところから綻びは顕在化していきます。

寺本名保美

(2021.10.12)



周回遅れと円安

現職の財務次官による雑誌への投稿が話題になっています。

キーワードとなっている、「与野党によるばら撒き合戦」と言う主張。
今日の与野党による代表質問を聞いていても、与党も野党も「分配」ばかりで、これほど与野党の政策に差が無いのは珍しいことです。

ただ、コロナ禍が周回遅れだったので、仕方がないのかもしれませんが、他の主要国が、ばら撒き一巡後の財源問題に政策議論が移りつつある中で、未だに一律給付金の議論をしている日本の新政権を、海外の投資家の目にはどのように映るのでしょう。

この間までのドル高が、徐々に円安に切り替わってきたように感じるのはいつまで経っても周回遅れから抜け出せないことへの焦りなのかもしれません。

寺本名保美

(2021.10.11)



ドル高

足下のドル円相場は、円安ではなくてドル高です。

今の日本は、政策的に何も動いていないので、日本円が主体的な値動きにはなりません。

米ドルの投機的なポジションの推移を見ていると、今年の7月辺りからドルロングのポジションが一本調子に拡大していることがわかります。

債券市場では、米国のインフレは一時的で、米国金利の上昇はまだ時期尚早であるといった意見が一般的でしたが、為替市場では早期の利上げの可能性を債券や株式市場よりは高く見積もっているのかもしれません。

日本の投資家なとっては、株安と債券安をドル高が補填してくれているので、現状の円安ドル高はありがたい結果ではありますが、あまり投機的なポジションが積み上がり過ぎてしまうと、次のリスクオフで株安と円高の二重苦に悩まされそうです。

これ以上のドル高が急激に進むようなら、反転に備えた方策を講じる必要があるかもしれません。

寺本名保美

(2021.10.06)



現実味の乏しい再分配論

岸田総理の言う、中間層の立て直しや、成長と分配、という視点は、米国をはじめとする先進国各国の共通の課題でもあります。

とはいえ、同じ文言を使っていても、現実の課題については各国でかなりのバラつきが見られます。

スーパー富裕層を抱える米国と、日本の富裕層とでは、資産の桁が二桁位異なりますし、株式市場がリーマンショック前の高値から3倍になった米国と、漸く30%上がった日本とでは、株式の譲渡課税の桁も二桁位異なりそうです。

逆に言うなら、金融課税の見直しなどの富裕層向け課税強化策を日本で行ったところで、再分配効果よりも株価が下落することによる逆資産効果の方が大きいのではないかという疑問が日本においては常に付き纏うわけです。

日本ならではの再分配は、所得間格差ではなく、世代間格差において意味があるという意見も根強くあります。

そもそもパイ全体が中々増えない中での我が国の再分配論に、どうもリアリティを感じることができずにいます。

寺本名保美

(2021.10.05)



いきなりの政治空白

岸田内閣が発足したものの、第一次岸田内閣は、僅か10日間で解散、月末には総選挙という、超超短期政権となりました。

選挙は水物。何が起きるかわからない、とするならば、今回の内閣の布陣への評価や、岸田総理への期待について口にするのは、もう少し待ってからの方が良さそうです。

と考えるのは、海外投資家とて同じなわけで、日本に対する投資判断もまた、10月一杯はお休みという感じでしょう。

海外の環境も不安定になりつつある中での、1か月の政治空白は、株式市場にとって、意外に大きなダメージになるかもしれません。

寺本名保美

(2021.10.04)



まだはもう

市場でバブルができる条件は下記のようなものだと考えています。

①実需で吸収しきれない流動性がある
②資金が集中する特定のテーマがある
③バリエーションの基準が定まっていない市場がある
④実は施政者側も歓迎している

2014年から米国や中国を中心に始まったネット相場がバブルであるとするならば、上記の4条件は綺麗にクリアされています。

逆に言えば、バブルが崩壊するときの条件は、上記を逆回転させればいいということになります。

①は米国のテーパリングと世界的なインフレ懸念
②FANG+Mに代表されるようなプラットフォームビジネスの成熟化
③仮想通貨市場の魅力度の低下
④各国政府による規制強化

もし今の金融市場がバブルであるするならば、崩壊の条件もクリアされつつあります。

今がバブルなのか実力なのかは、崩壊するかしないかでしか確定しません。

崩壊してからでは手の打ちようがないのがバブルです。

「もうはまだなり、まだはもうなり」株式市場に江戸時代から続く格言です。

寺本名保美

(2021.10.01)


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