2020年10月の思いつき


試練の冬

米国では大統領選挙を前に、治安悪化への備えが進められています。

フランスを始めとした欧州圏では、ロックダウンへの抗議による暴動が多発しています。

コロナ禍による行動制限が続き、誰しも大なり小なりのストレスを感じての生活が半年以上続く中、ほんの少しの刺激が触媒となって大きな騒乱に繋がるリスクが高まっています。

国民の不満の抑え込みに失敗した国は政権の存続が危ぶまれることになるでしょう。

これは中国やロシアであっても例外ではありません。

国民生活の緊張が政治の緊張を招き、政治に冷静な判断能力を失わせることが一番怖いことです。

今年の冬を無事に超えることができるかどうか。

各国の政権にとって、且つてない試練の冬となりそうです。

寺本名保美

(2020.10.30)



金利が消えたということ

生保の保証利率が大幅に引き下がるとの報道で、ドタバタの朝です。

スポンサーサイドとして、言いたいことは色々ありますが、それはまたの機会にします。

幾ら解約調整金を設定しても、銀行預金も国債利率も国内外とも消滅した環境下において、1.25%の保証利率を出し続けることは現実的ではないというのは、客観的に見れば妥当な判断となります。

生保は運用に多額の設備投資をし、精緻なリスク管理を行い、それなりにリスクのある高度な運用をしています。過去の含み益もあります。

それでも1.25%というのは、保証利率としてはあまりにも高いのです。

今朝の新聞の一面を一般の方々がご覧になり、理解していただきたいことは、こうした生保ですら、たかが?1.25ですら、約束することができない金融環境であるという現実です。

この金融環境において、5%や8%だのといった利回りを保証するような運用商品は、特別な富裕層向けであろうがなかろうが、この世の中に存在する訳が無いということです。

コロナ禍によって世界の金利が消えた影響は、これからあちらこちらで顕在化することになります。

寺本名保美

(2020.10.29)



中国のEV化意味すること

中国が2035年に化石燃料車両の実質ゼロを掲げました。

中国がEV車を主導できる要因は、車両としての技術開発力ではなく、発電の優位性にあると言われています。

元々石炭を中心とした化石燃料には恵まれた国であったのに加え、ここ10年広大な国土面積を利用した、太陽光や風力などの次世代発電が発電総量に占める比率も増加しています。

国土が広いということは、どのような発電方法を取るにしても優位です。電力コストが安いということはEVの分野だけでなく、産業全般における国際競争力に大きく寄与します。

国土が狭く、自前の化石燃料を持たず、原発の再稼働も難しい我が国との対比においては、圧倒的なアドバンテージだと言えます。

中国のEV化に自動車産業としてどう対応していくか、というよりもEV化をためらうことなく推進できる発電能力についての冷静な評価と対応が、日本においては喫緊の課題なのではないかと思っています。

寺本名保美

(2020.10.28)



特定目的債券

EUがソーシャルボンド(社会貢献債)やグリーンボンド(環境債)の発行を積極化している背景は、気候変動リスクに積極的に取り組む姿勢を反映していると共に、コロナ禍による財政拡大や共同債の発行に対して警戒するEU域内の世論に配慮する目的もありそうです。

今回発行されるソーシャルボンド(社会貢献債)は、コロナ禍によるEU域内の雇用支援制度の基金に充当され、今後大量発行が予定されているグリーンボンド(環境債)境債は、2019年末に発表された欧州グリーンディールの実現に向けての起債となります。

社会貢献や環境という特定目的を謳うことで、投資家資金を集め易いことも利点であることは言うまでもありません。

こうした特定目的債券の発行は、日本においても戦後インフラ復興に当たって、国鉄債・道路債・関空債等、積極的に活用されてきた経緯があります。

財政状況はEUに比べ格段に悪い日本ではありますが、雇用の再構築や2050年温暖化ガスゼロ目標に向けて、EUのような特定目的債券の活用は一案なのではないかと思っています。

今の時代、あらゆるイノベーションの成功は投入される資金量に多大な影響を受けています。

規制改革でスピードを上げることも重要ですが、海外勢に負けない資金量をどう調達し投入していけるかが勝負の分かれ目になるでしょう。

これまであまり議論されてこなかった公的債務の調達方法についても、新たな視点で見直す時期なのかもしれないと思っています。

寺本名保美

(2020.10.27)



不安を表す歪み

米国の大統領選挙を前に、株式市場は国内外ともポジション調整の時期に入ってきています。

上も下も大きくは動き難く、材料に反応してもその日の内に手仕舞っている感じでしょうか。

そうした中で、相変わらずなのが、バリューと低ベータ特性の劣後です。

コロナ禍で不振だった高配当特性については、やや盛り返してきましたが、バリューや低ベータについては目を覆うばかりの惨状が継続中です。

もちろん惨状といっても、各々ベンチマーク対比での収益率であったり、成長特性のあるファンドとの比較においての劣位の話をしているわけで、お金を減らしているわけではありません。

今の現状は投資家が経済や企業の成長への確信度が強いからの成長株傾斜というよりも、むしろ市場の先行きに不透明感があるからこそ、成長という果実が明確に見える(ような気がする)企業に資金が集中しているようにも見えます。

米国大統領選が終わったあと、市場が上に反応するか下に反応するかよりも、このトレンドの歪みがどのように反応するかをみておくことが、その後の市場の方向性の占う一つの材料になりそうな気がしています。

寺本名保美

(2020.10.26)



時が経ち、時代は変わる

三菱重工の国産ジェット開発が凍結される可能性について報じられています。

10年ぐらい前、自動車の電装化の議論が始まった頃、日本の自動車部品技術を継承する次世代産業として、この国産ジェット開発に大きな期待を持ってみていました。

それから時間が経過し、社会情勢も劇的に変化する中、ドローン技術の発展によって「空飛ぶ車」も夢物語ではなくなっています。

移動手段の多様化に加え、コロナ禍による人の行動様式の変化は、もはや巨大な鉄の塊を飛ばすことの価値を大きく低下させることになりました。

国産ジェットの中止は寂しいですが、これを機に国として次世代移動手段への開発に舵をきるきっかけになるのであれば、良いと思います。

寺本名保美

(2020.10.23)



誰がなっても遅かれ早かれ

国内外で大きな選挙がある度に、政治が経済のトレンドにどれほどの影響を及ぼすことができるものなのかと考えます。

トランプ大統領の4年間、経済が好調だったのは、トランプ政権の成果なのか。それともオバマ政権の遺産なのか。

アベノミクスの成果は、安倍政権の功績なのか、民主党政権の反動なのか。

所詮経済は産業のイノベーションや企業の成長によって変化するもので、政治ができることは、税体系や規制緩和での側面支援や、企業や消費者のセンチメントを動かすことに過ぎないのではないかと、思っています。

トランプ政権と安倍政権の共通点は、いずれも前政権が財政抑制的で且つ企業よりも国民生活への分配を重視した政権であったことで、企業マインドが実態よりも冷え込んでいたところにあります。

大統領選挙の行方が気にはなりますが、誰がなったとしても影響は一時的なもの。今の株式市場が本物なら売られても戻り、今の株式市場が幻想なら大きな水準調整となるでしょう。

要するに、誰がどうなろうと、現状を見極めるのが一番大事ということです。

寺本名保美

(2020.10.22)



巨大ライバル同士の提携

Googleが米国で反トラスト法違反で提訴されました。

今回の提訴は検索エンジンとしてのGoogleの提訴です。

WSJの解説では、問題視されているのはGoogleとアップルとの間での検索エンジンに関わる提携で、アンドロイドとiPhoneという、世界最大のライバルであると思われていた2社が実際は協業することで、検索エンジンや広告の分野で、排他的な地位を確立していたのではないかといわれているようです。

Googleについては、持株会社であるアルファベットについても多岐にわたるプラットフォームを独占していることへの懸念から、事業分割への圧力が高まりつつあります。

今回の検索エンジンに焦点を絞った提訴は、今後のGAFAプラットフォームを巡る政治的包囲網の、端緒に過ぎないのかもしれません。

それにしても、GoogleとiPhoneが提携して情報管理をしていたとするなら、我々の個人消費の傾向など本当に簡単に操作されてしまっていたのだろうと、改めて実感します。

寺本名保美

(2020.10.21)



間違いを前提に

金融庁が調査に入ると報じられている東証のシステム障害問題。

問題の根幹は、システム障害があったことではなくて、障害があった時の再起動対応ができなかったことにあると言われています。

システムに障害は付き物で、その際の外部ユーザーとの連携を含めた復旧シナリオが確立されていなかったことに、東証の姿勢が問われています。

危機時への対応シナリオの策定は、システムだけでなくあらゆる業務に共通するリスク管理の基本です。

人間は間違うこと。機械は壊れること。を前提とした業務フローの重要さ改めて考えさせられる事象です。

寺本名保美

(2020.10.20)



中銀の声

各国中央銀行が、景気の先行きに対し悲観的な見通しを出し続けている背景を考える必要があると思っています。

一つは、現在の超緩和的な金融政策の出口が遠いということを市場に浸透させること。

二つ目は、現在高値圏にある株式市場を中心としたリスク資産に対し、警戒を発すること。

最後に、各国の政治に対し、財政支出を含めた更なる経済対策を求めること。

中銀との対話に慣れている債券市場については、中銀が発するメッセージを受け取れているように見えますが、株式市場には全く届かず、政治は目先の対応と内部対立に忙しく対応ができていません。

各国とも金融政策は既に限界まで緩和しているため、この先中銀としてできることは、経済実態を正しく把握し、その結果を伝えていくことしかないのです。

米国や英国の政治が混迷し、当面機動的な対応が期待できない中、とりあえずは、今一番冷静沈着に判断しているように見える各国中銀の声によく耳を澄ましておくことがリスク管理上は重要なのではないかと思っています。

寺本名保美

(2020.10.19)



嵐の前の静けさ?

足元の金融市場はバイデン候補と議会民主党の圧勝によるスムーズな政権交代と迅速な追加予算の計上を期待する、ブルーウェイブ相場になりつつあります。

私も1週間ほど前に、どちらでもいいから圧勝して欲しいと、書きましたが、不確実性を嫌がる市場参加者の気持ちは一致しているということでしょう。

一方で相変わらず全く霧が晴れないのがBrexit交渉。

フランスもドイツも英国も、新型コロナの第二波への対応に追われる中での大詰めの交渉は、11月上旬をめどにした暫定合意ができるかどうかが目先の焦点になっています。

6月にBrexitショック11月にトランプショックと二つのショックが重なった2016年と同じイベントが、今年は11月一か月に集中することになります。

恐怖指数と呼ばれるVIXは、足元は不思議な程低位で安定していますが、これが嵐の前の静けさでなければいいのですが。

(2020.10.16)



経済再開の目的

欧州が感染拡大第2波への警戒を高めています。

小康状態にあるように見える日本は、様々な制限を緩めています。

コロナ禍への警戒がある中での経済活動の再開は、非接触型のビジネスモデルを含めたDX化を促進します。

企業や店舗が非接触型サービス形態に向けての設備投資を進めることで、結果として暫定的措置だったはずの非接触型サービスが、常態化し、接触型サービスに従事していた雇用の喪失が確定することになります。

今年4月以降の緊急事態宣言に関わらず、国内倒産件数は低位で安定し雇用問題もまだ顕在化していません。これは雇用調整助成金を始めとする政府支出が国民生活を支えているからです。

政府支出で国民生活を支えながら、経済活動の制限を継続しコロナ禍が終息するのを待つことができるなら、非接触型サービスへの傾斜はこれ程には進まず、従来の雇用が維持される可能性が高まります。

しかし、それを続けていくと、どこかで国庫財政が破綻します。

つまりコロナ禍での経済活動の再開は、立ち行かなくなる国民経済を守るため、ではなくて、立ち行かなくなる国庫財政を守るため、と理解した方が腑に落ちます。

オリンピックというビッグビジネスを見据えた、前のめりの経済活動再開を、国民の生活を守るため、というフレーズで説明されるのは、どうも気持ちが悪くて仕方がないのです。

寺本名保美

(2020.10.15)



酷いSNS

この数日、Facebookを開いてもTwitterを開いても、壊れた蛇口から噴き出す水のようにトランプ大統領の投稿が溢れています。

4年前の選挙戦の際、トランプ候補の投稿が、意外に秩序だって計算された投稿になっているのを見て、頭の片隅に「もしドラ〜もしドナルドトランプが大統領になったら〜」のリスクがよぎったことを思い出しました。

それに比べて今回、全く統制が取れていない感情的な投稿が爆裂しているのを見ると、本人だけでなく選挙スタッフの焦りの様なものを感じます。

選挙は結果が出るまでは水物ではありますが、今の蛇口の壊れたSNSを見る限り、「もしドラ」の第二幕は無さそうなきがしてきました。

寺本名保美

(2020.10.13)



この政権、なんだか危なっかしくて、、、

河野行革担当大臣の、規制緩和に関しては失敗を恐れず実行する。失敗したら謝ればいい、という発言が報じられています。

当然ですが、謝って済む失敗と済まない失敗があります。

人の命や財産に係る失敗は、謝って済むものではありません。

規制緩和の結果、事故が増えたり、詐欺や犯罪が横行するようなことは、あってはならないはずですが、恐らく避けて通ることはできないでしょう。

失敗を恐れない、までは良いとして、謝ればいい、は暴論です。

失敗の可能性を検証し、最悪ケースにおけるセイフティネットを設える位の準備はしてもらわないと、危なっかしくて仕方ありません。

考える前に走り出すのは、GO to 止まりにして欲しいと、思っています。

寺本名保美

(2020.10.12)



デジタル通貨という破壊力

日米欧の中央銀行が、デジタル通貨導入に係る基本原則を公表しました。

そこには、デジタル通貨が既存の民間による金融決済サービスを阻害しないこと。現金などの既存の貨幣制度と両立すること、電子マネーなどの民間の技術革新と共存することなどが、示されています。

逆にいえば、中央銀行によるデジタル通貨は、既存の金融機関ま電子決済サービス会社も、ATMや自販機などのキャッシュシステムも、根底から破壊するほどの威力を持つ、新技術ということになります。

今、国が、デジタル庁を作って、一つ一つ進めていこうとしている、社会のデジタル化は、経済システムの根幹である通貨がデジタル化することになれば、一気に進まざるを得なくなるでしょう。

今回各国中央銀行がデジタル通貨へ大きく踏み出すきっかけとなったのは、中国元のデジタル化が背景にあると言われています。

国際決済通貨として、より利便性の高いデジタル通貨の世界において、中国に先行されてしまうことは、国際的な経済覇権を中国に握られることを意味します。

デジタル社会というものは、それぞれの国が好むと好まざるとに関ず、先行する国の後を追いかけていくという選択肢しか残されていないということなのかもしれません。

こ本当にデジタル通貨が導入された後の社会は、今想像できている概念とは、さらにもう一段別の次元にあるかもしれず、少し怖くなってきました。

寺本名保美

(2020.10.11)



どちらでも良いので大差でお願いします

トランプ大統領が、第二回目のテレビ討論会がバーチャル形式なら出席しないと言っているらしい。

別に録画形式というわけでなく、リアルに画面越しでの討論とテレビカメラを前にした討論と何がそれほど違うのかよく判りません。

前回の、第一回の評判が悪かったから、もしくは今の体力てテレビ討論会をするのは得策ではないから、という戦略的判断から、バーチャルという提案を口実として、討論会を避けたとも思えてきます。

選挙選も投票方式も異例だらけで進む大統領選も後1ヶ月を切りました。

望むべくは、どちらが勝ってもいいので、揉めない程の大差でスッキリと決まることなのですが。

寺本名保美

(2020.10.08)



株式市場はトランプ大統領優勢?

トランプ大統領が、コロナ対策の追加予算協議を大統領選挙の後まで先延ばしにしました。

トランプ大統領が再任されれば、直ぐに追加支援策を講じると言っているのは、つまりバイデン候補が勝利した場合は来年の新政権発足までコロナ対策予算は付かないかもしれないと、言っているわけです。

この脅しに警戒を強めているのは株式市場だけでなく、FRBのパウエル議長も同様で、追加の財政措置の速やかな実行を求めています。

また、議会下院では、GAFA.4社に対し、独占禁止法の適用による規制強化や事業分割を求める意見書が提出されました。これについても民主党中心の議論であることから、バイデン候補が勝利した場合、株式市場のリスク要因の一つになりそうです。

個人的には、トランプ第二政権は見たくないのですが、株式市場的にはトランプ大統領再任への期待感の方が強いかもしれません。

寺本名保美

(2020.10.07)



意外にリスキー

菅政権の政策が具体的に見えてくる中で、どこか生煮えな感じがして気持ちが悪いです。

官僚の書いたシナリオから脱却しているのかもしれませんが、今度は声の大きな民間人の主張を咀嚼せずに飲み込んでしまっている印象があります。

声の大きな民間人の主張は、キャッチーで見栄えが良く、株式市場的には海外からの受けも良いのですが、全体感に欠けるため、後々想定外のリスクが発生するような危うさを伴っています。

堅実であるはずの菅政権の船出が、思いの外リスキーに感じるのは、結果を急いでいるからだけでは無いのかもしれないと思っています。

寺本名保美

(2020.10.06)



究極の自助

確たる根拠は無いですが、菅政権がもし長期政権になったとしたら、どこかのタイミングで日本版ベーシックインカムの議論が出てくるような気がしてなりません。

何故なら、ベーシックインカムという概念は、究極の「自助」の概念であり、最も効率的な行政の姿だからです。

以前小泉政権時代に、公的年金の存続が議論になったことがありました。積立金を全て国民に払戻し、掛金分を給与に乗せて、自分の老後は自分で責任を持つべきだ、という論調がどこからともなく広まっていきました。

ベーシックインカムというのは、年金に限らず基本的な公的支援を廃止する代わりに、一定の現金を国民に配布するというものです。年金や失業給付が廃止されるのは見えていて、あとは健康保険や介護保険など、どこまでが廃止、または、有料化の対象となるかは、未知数です。

小さな政府を目指す方法論なので、コロナ禍により膨らみ続けるであろう財政赤字を解消するには、使い勝手なよいアプローチだとも言えます。

小泉政権時代の年金騒動は、数年経った頃には、自助どころか、年金給付金額を如何に減らさずに維持できるか、という真逆の議論にすり替わっていました。

年金の顛末を見る限り、ベーシックインカムという自助論が、日本社会で受け入れられることはまず無いと思ってはいますが、一見耳触りの良いこの単語に乗っかってしまう空気が、知らぬ間に醸成されていきそうな予感がしないでもありません。

寺本名保美

(2020.10.05)



米軍最高司令官

トランプ大統領が新型コロナに感染と聞けばさもありなんと思い、米国大統領が感染と聞けばあり得ないと思い、核のボタンを待つ米軍最高司令官が感染と聞くとゾッとします。

4年前、トランプ氏が大統領に就任した時、米軍幹部が非常事態だと言ったという噂が流れたことの意味が、今になって分かった気がします。

今回トランプ大統領が軽症で終われば、トランプ大統領個人の信任は復活し大統領選挙にはプラスに働くかもしれませんが、米国政府や米軍への海外からの信任は回復されることはなく、世界における米国の威信には取り返しがつかないほどのマイナスとなるでしょう。

とはいえ、そもそもトランプ大統領は、国際社会における米国の威信などというものには興味がなさそうなので、一旦自分が元気になってしまえば、今回自らが招いた結果の意味を特に考えることもないかもしれませんが。

寺本名保美

(2020.10.04)



国際金融センターという幻想

東証のシステムが丸一日停止するという、前代未聞の事態に、国際金融センターを目指している最中だというのになんたること、という反応が官邸から聞こえてきます。

東京都も同じですが、何故、今更、国際金融センターを目指すのか、私にはよく理解できません。

そもそも、今回のコロナ禍において、金融取引の殆どはテレワークで対応可能であることが確認されているわけで、いわゆるファンドマネージャーやアナリストと呼ばれる人々の在宅ワークも進んでいます。

目指している金融センターというものが、何を指しているのかが今ひとつ明確ではないのですが、それが世界の金融プロフェッショナルが東京に居を構え、東証を使って大量の金融取引を行うことを意味しているのだとするなら、それはもはや一時代前の幻想に過ぎないのではないかと思うのです。

恐らく早晩、ファンドを含めた金融業における業務上の場は、殆ど意味のないものとなり、あらゆる金融取引は、ネット空間で完全に完結するようになるでしょう。

日本に投資するために求められているのは、日本にリアルに進出するための拠点の利便性ではなくて、拠点を持たなくても日本の市場や投資家にアクセスすることが可能となるような、規制改革であり、租税措置でしょう。

金融取引というものは、そもそも電話一本で成り立ってきた、非接触型サービスの典型のような業態です。

国際金融センターなどいう過去の幻想から、東京都も官邸も、そろそろ目を覚ました方が良いと思うのですが。

寺本名保美

(2020.10.01)


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