2018年08月の思いつき


大人として

ここから半年のリスクイベントにブレグジットが再び浮上してきました。

ハードブレグジット(合意無きブレグジット)を回避しようという意識が希薄化してきたことに不安を感じます。

ギリギリになって合意はするのかもしれませんが、そうなるまでの過程においてかなりの混乱が想定されます。

無謀な駆け引きをする当人達は自業自得としても、その無謀さが国際経済や市場にどれだけの摩擦を引き起こすことになるのか、2016年の国民投票で実証済みのはすです。

お子様米国の手本となるような、大人の英国を見せていただきたいものです。

寺本名保美

(2018.08.31)



頭と尻尾

2018年度の資産運用は、一言で言えばストレスの溜まる環境が続いています。

米国株式以外の市場リターンが殆ど上がっていない、というだけではなく、アクティブの超過収益も全体として苦戦しています。

様々な資産や戦略で市場の過熱感を感じているファンドマネジャーも少なくないので、リスク抑制的なオペレーションをしているファンドが多い割に、8月の下落局面では市場以上に下落するファンドが目立ちました。

この2ヶ月位で、株式とか債券とかを問わず、リスク資産全体から資金が逃避しているような印象があります。

まだ目に見えた資金流出や、特定資産の損失が出ているわけではなさそうですが、投資家センチメントが微妙に変わりつつあるのだと思っています。

ここから更にリスク資産が上昇するシナリオは当然あるのですが、そこでついていくのは止めておいた方が良いような気がしています。

寺本名保美

(2018.08.30)



日本の縮図

Bloombergによれは、日本株の今年に入ってからの海外投資家のネット売り越し金額は、ブラックマンデーのあった1987年以来の水準に膨らんでいるそうです。

消費増税、米国との貿易問題、日銀のステルステーパリング、と色々外的要因が分析されていますが、要は魅力がないということです。

世界の過剰流動性が徐々に縮小し、グローバルな株式市場全体に警戒感が出てきている中において、単に割安というだけで資金フローを期待することはできなくなりました。

目先の価格変動ではなく、中長期の成長にフォーカスが当たる局面において、日本企業か振り落とされています。

今ここにきて、米中のIoT会社と手を組むのなら、何故もっと早い内に10年ビジョンを示せなかったのか。

石橋を叩いて勝ち馬に乗乗ったつもりが、既に馬は疲弊していた、みたいなことが、彼方此方で見られます。

日本の株式市場が評価されないのは、日本の経営者が評価されていないからです。米国のせいでも日銀のせいでもありません。

もちろん、中には良い企業もあります。でも市場全体が評価されなければそういった良い企業への資金フローも限定的になるのです。

株式市場は正直です。
謙虚に市場の声に耳を傾ける必要を感じます。

寺本名保美

(2018.08.29)



夏休みの自由研究

昨晩話題の世田谷区の住人です。

強烈な湿気を異常な熱射で炙ると、強大な雷雲ができます、という理科の実験を体感させていただきました。

で、雷雲直下での雷というものは、ピカッゴロゴロではなく、画面のフラッシュにご注意ください、というテレビのテロップさながらの光の爆発と、戦時中かと思う様な爆音が、絶え間なく続くものだということも学びました。

雨が降れば雷は収まる、といういうのも、直下にいると役に立たない迷信でした。

まぁ、何事も経験してみないとわからないということで。

こんな笑い話で済んだからよいものの、自然の恐ろしさ、身に沁みました。

日本各地、世界各国、自然災害との戦いが続いています。

くれぐれもご自愛くださいませ。

寺本名保美

(2018.08.28)



自国優先

ジャクソンホールでFRBのパウエル議長は90年代後半の米国の金融政策を意識していると発言しています。

90年代後半の米国の金融政策において忘れてはいけないことは、米国の金融政策に新興国への配慮は見られなかった、という事実です。

アジア危機がロシア危機に伝播し、それが米国のヘッジファンド経由で米国国内の金融システム危機に波及する可能性が出て、米国の金融政策は反応しましたが、これはあくまでも自国の金融システムを守るための措置です。

2013年のバーナンキショックの際も議論になりましたが、米国に限らず金融政策判断は自国の為だけに行われます。逆に他国動向を意識した金融政策が行われるのはモザイク中銀であるECBだけです。

今回パウエル議長が改めてルールベースの緩やかな利上げを継続することを明言したことは、対トランプ大統領への牽制だけでなく、IMFを始めとする新興国への配慮を求める声に対する牽制でもあったのかもしれません。

寺本名保美

(2018.08.27)



不規則発言

この数週間、トランプ大統領の不規則発言が気になっていました。

今までは表現に問題はあっても、発言内容には賛否は別として妥当性がありましたが、このところの発言にはポリシーが感じられません。

側近が有罪を認め、本人の弾劾の可能性が出てくるなど、精神的にやや不安定になっているのでしょうか。

で、昨日の、「もし私が弾劾されたら市場は急落し、人々は貧乏になるだろう」という発言に繋がるわけです。

米国市場が早晩急落する可能性を否定はしませんが、それはトランプ大統領の弾劾には直接的には関係がないような気がします。

短期的には米中貿易問題が一旦棚上げになるので、米中懸念で頭が抑えられている株式市場はむしろ上昇するかもしれませんし、株式市場が急落したら貧乏なるぞ!という発言には、トランプ大統領が如何に自らの成績表として株式市場を意識しているかという本音が見え隠れします。

手負いの獅子は厄介です。
ここから暫くは、想定外の爆弾発言に警戒が必要でしょう。

寺本名保美

(2018.08.24)



金利の手綱

金利動向が株式市場の銘柄選択にも影響を与えてきているなか、市場の注目は米国から徐々に欧州にシフトしてきています。

短中期の金利については、日本よりマイナス幅が大きい欧州金利が正常化すれば、短中期の調達コストはグローバルに上昇します。

また、長期の金利については、ドイツやフランス国債と米国国債との金利差が縮小すれば、米国の10年金利が3%からもう一段上方修正するきっかけになるでしょう。

米国の金融政策に政治的な圧力がたすとえ掛かったとしても、他の主要国の金融政策にトランプ大統領が口を出すことはできません。

株式市場以上にグローバル性の高い金利動向。
一国だけでコントロールできない怖さを秘めています。

寺本名保美

(2018.08.23)



引き算から足し算へ

生命保険会社の販売する法人向けの節税商品が問題になりつつあります。

弊社のような零細企業にも、この2年ほど春先になると、あらゆる保険会社から勧誘の電話がかかってきます。

こうした商品だけでなく、例えば現在荒れ模様の新興国通貨債券にしてもある種の節税商品としての性格を持っていますし、一時期のタワーマンションフィーバーのきっかけも節税です。

国が消費テコ入れとして行う政策までが、住宅「減税」やエコ「減税」で、日本でお金を動かす動力は「リターン」ではなく「節税」であるとの認識が官民ともに定着しているようです。

税効果を含めてのトータルリターンという発想であれば、間違ってはいないとは思うものの、「収益」より「減税」という意識が強すぎる現状は、日本の金融市場の発展を阻害します。

減税効果は所詮引き算の効果です。お金を増やすことよりも減らさないための工夫です。引き算をしている限り社会全体でのパイは増えません。

「貯蓄から投資へ」、に加え、「減税から収益へ」、という目標が必要なのかもしれません

寺本名保美

(2018.08.22)



そろそろ?

経済マクロはまだ強いと思ってはいるのですが、グローバルな株式市場において米国株式だけが強いという現状に、やはり違和感を感じています。

業種間でのバラツキやネット関連株の中でのバラツキが大きくなってきていること、アクティブファンドの超過収益のバラツキが大きくなってきていること、定量ファクターが効かなくなっていること。

それぞれまだシグナルとしては軽微なものではありますが、バブル期の株式市場に出てきやすい現象もチラついてきました。

直ぐにとはいいませんが、少し警戒モードに入った方が良さそうに思います。

寺本名保美

(2018.08.21)



1998年

ご無沙汰いたしました。

先週1週間、心配していた新興国も新興市場も、深押しすることはなかったものの、禍が少し横に広がってきたような気がして、落ち着かない気分での夏休みとなりました。

メディア等で目につくようになりましたが、今の環境を1997年から1998年と比較してみたくなるのは、自然の成り行きで、9月6日に予定しているセミナーのサブテーマでもあります。

逆にいうなら今は2006年までの米国利上げとその後のサブプライムショックを連想するような局面ではないということなので、背中がざわざわしながらも、市場全体が崩れる心配をするのは、もう少し先でしょうか。

いずれにしても、ボラティリティの高い市場が続きそうです。一旦荷物を軽くして、次の反発に備える時期かもしれません。

寺本名保美

(2018.08.20)



夏休み

暑中お見舞い申し上げます。

筆者、今週夏休みをいただきます。

お客様にはご迷惑をお掛け致します。

緊急のご用件等ございましたらメールにて対応させていただきますので、よろしくお願い致します。

新興国や新興市場、という単語が頭に引っかかるのですが、心身ともに穏やかに一週間が過ぎることを願っています。

寺本名保美

(2018.08.13)



宇宙軍⁈

ロイターによると、米国が宇宙軍の設立に向けた本格的な議論に入った、そうです。

賛否両論があり、という文言を見た時、宇宙空間での軍拡懸念のことかと思ったところ、単に空軍との覇権争いの話でした。

GPSを含めた宇宙空間に関わる軍事技術や情報についての利用やコントロールについて、現状は空軍の所管になっているそうですが(本当のところはわかりませんが)、それを新設する宇宙軍と空軍とに分けると、トータルの予算はきっと増えることになるのでしょう。

ある意味これも、新手の財政拡大措置の一種ということです。

米国経済が軍需主導であるという事実を改めて認識するような話題でもあります。

寺本名保美

(2018.08.10)



日本の居場所

この先、ずーと先、世界経済が米国圏と欧州圏とアジア圏に分断したとして、日本は環太平洋のドル圏を選ぶのだろうと思ったりします。

日本がアジアの盟主を目指した時代もありましたが、今は影も形もありません。

地理的にも政治的にも中途半端で生きにくて面倒な世界が、ヒタヒタと迫ってくる気配を感じずにいられません。

寺本名保美

(2018.08.09)



未公開化

テスラが株式の未公開化を検討していると報道されています。

企業規模の急拡大にマネジメントが追いつかない状況において、株主というステークホルダーから一旦切り離されてみることは、経営を安定化させ、次の一歩を検討するにあたっては、良い判断であると、市場からは概ね好意的に評価されているようです。

若い経営者がファンド等のプロの経営手腕を取り入れることも、一つの選択肢です。

経営のプロフェッショナルという業種が確立している米国だからこその荒業かもしれませんが。

寺本名保美

(2018.08.08)



新興市場のリスク

2018年になってから一本調子で下げ続けているマザーズ指数やJASDAQ指数が気になります。

日本における新興市場を「炭鉱のカナリア」と称する人も居ますが、過去を見る限り新興市場の崩落が大型指数の下落に連鎖するには1年以上のタイムラグがあります。

新興市場の金利感応度が大型株よりも高いことや、業績の成長変化の期待角度も新興市場の方が高いため、金利や景況感の踊り場での反応がやや早めに且つ過激に出る傾向があるのです。

今年になってからの不調の原因がまだ定かではないので、今回の調整が一時的なものに終る可能性も否定はできません。

但し、一旦需給の逆回転が起きると、理屈が通らなくなるのが、新興市場の最大のリスクです。

深追いはせず、少しずつ距離をとっていきたいと思っています。

寺本名保美

(2018.08.07)



先進国の境界線

少なくても金融市場において、先進国と新興国との分かれ目は、金融取引の規模や経済活動の大きさ、ではなく、国境を越えた経済取引が政治外交と如何に切り離されて管理されているか、だと思っています。

サウジアラビアが、内政干渉を理由にカナダ大使を国外退去とし、経済取引も停止すると言っています。

サウジアラビアが今、石油産業依存から脱し、どのような新しい国になろうとしているのか、各国の注目を集めている最中において、G7加盟国との経済断絶を宣言するような姿勢は、サウジへの各種投資を検討する投資家に対し大きな失望を与えます。

まぁこういった関連からみれば、今の米国も先進国の新興国の境界線上にいるようなものではありますが、米国の場合は企業の主体性が政治からの介入を排除できるほど強いので、今のところは先進国の体制を維持できています。

サウジがその資金量に見合った、大人の国になるのには、まだかなりの時間が掛かりそうです。

寺本名保美

(2018.08.06)



これもディフェンシブ

株式市場でのディフェンシブ銘柄という表現は、その時々で変遷します。

景気後退期に強い銘柄
株価変動が小さい銘柄
配当の高い銘柄
業績予想の確信度の高い銘柄

今のディフェンシブは、やや業績予想の確信度の強さを重視しているように見えます。

外部環境が不透明である中で、米国のハイベータなネット関連株が強いのも、それが足元におけるディフェンシブカテゴリーであるからとみれば少し納得していただけるでしょうか。

寺本名保美

(2018.08.03)



警戒警報

0.2%まで行っていいよ、と言われたので、とりあえず行ってみることにした債券市場です。

ダルマさんが転んだ、と、どこまで近づいたら怒られるか、やってみた。

子供じゃあるまいし、という声も聞えてきますが、ディーラー感覚などそんなものです。

もちろん日銀も、こういう反応が市場からでることは百も承知で発言している「はず」なので、今更驚いてはいないと「思い」ます。

とはいえ、この10年金利の変動幅、弊社が四半期ベースで計測している2標準偏差の上限を超えてきています。

リスク量で保有債券をコントロールしている業態においては、リスクが許容範囲を超えてきているでしょう。

怖いもの見たさの火遊びを日銀が消火に失敗すると、大火事を招くことになります。

国内債券市場、目先は要警戒です。

寺本名保美

(2018.08.02)



投資家次第

ということで、オリンピックが来る頃になっても日本には金利はない、ということを日銀が約束したようです。

で、長期金利は10年でマイナス0.2パーセントからブラス0.2パーセントまでの範囲で動くことになりました。

多分後2年の間には、金融市場になんらかの軋みが発生するので、その時は、マイナス0.2パーセントまで金利が下がる余地ができたということです。

利回りのない債券など持つ必要がないという視点と、いざという時に2パーセントから3パーセントの収益率を稼ぐ可能性ができたという視点と、どちらを取るかは投資家の会計制度によっても変わります。

少なくても、年金にとっては、国内債券投資への意味が今回少し復活したということでもあります。

寺本名保美

(2018.08.01)


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