2007年03月の思いつき


リスクをマネージするというカルチャー

今日の日経新聞に掲載されていた、サッカーのオシム監督の「日本人とリスクの話」は面白かったです。

資源もなく国土も小さい、本当はリスクの高い環境で生きている日本人は、危ないことはしないようにと親に言われて育ってきた。そんな日本人にリスクをとるサッカーをさせるのは難しいとオシムさんは言っています。

おそらく、我々日本人にとってのリスク管理とはリスクのあるものには近づかないことで、リスクを取るということはリスクの存在に目をつぶって突進すること、なのではないかと感じています。

一方オシムさんが指摘しているように、本来のリスクの取り方とは、リスクの存在を充分に認識し、適格な状況判断の結果としてリスクに近づくことです。

リスクを取るか取らないかという二者択一ではなく、リスクをマネージするという感覚は、確かに日本には育っていないのかもしれません。

日本のサッカーが弱いのと、日本の金融機関が弱いのは、どこが共通点がありそうですね。

(2007.03.30)



運用を愛する経営者

日本の金融市場には資産運用業の歴史が短いために、金融業界においてこの分野でのマネージメント経験者が異常に少ないという現状があります。

以前は資産運用の現場にも運用経験のない出向者がいたようなケースもありましたが、さすがに現場ではプロパー社員など専門性の高い人材が中心を占めるようになってきました。

一方、そういった専門的な人材が内部昇格で資産運用会社のTOPになるケースはまだまだ少なく、経営サイドは相変わらず親会社からの天下りが中心です。銀行や生命保険など大会社の社長と異なり、資産運用会社では経営者自らが広告塔になったり、顧客と直接話をしなければいけないケースも出てきます。商品知識の乏しいTOPを掲げている会社は、TOPが動けば動くほどマイナス効果となるというケースも見受けられます。

海外の老舗の運用機関のように運用を心から愛する経営者に、日本でも早く巡り会いたいものです。

(2007.03.29)



人様のお金

村上ファンドの村上さんが裁判で「人様のお金を預かるのはむちゃくちゃ大変。ファンドの世界には二度と戻りたくない」と言った、という記事が日経新聞にありました。

そうそう、それがわかっただけでもよかったね。と思う私です。

人のお金を預かるということは、自分の思い込みだけで動かせるようなそんな単純なものではなく、結果がよければ経過は問わないというものでもなく、だからといって結果が悪ければ皆いなくなる、という大変難儀な商売な訳で。
一言で括ってしまえば、『説明責任』を果たしながら『結果』を残すという絶対的なルールの中で『自分の信念』を形にしていくのがファンド運営者のお仕事。

この3つのキーワードを同時に実現していくことは、とてもとても難しい。少しお金や経験があるからといって、安易に人様のお金に手を伸ばそうなどと思わないことです。

(2007.03.28)



サブプライムと移民第三世代

2―3年前、米国の住宅市場の過熱感が話題に成り始めた頃、米国は住宅バブルではないという根拠に用いられたキーワードが「移民第三世代」でした。
彼らの旺盛な住宅需要を背景とした需給は本物であり、また米国にはこうした中低所得者向けの住宅ローンの仕組みが整備されているため、住宅市場の伸びは中長期的に継続するであろう、という説明を何度も受けた記憶があります。

ここで登場した、中低所得者向けの住宅ローンというのが、まさに今話題の「サブプライム」ローンです。
もし今後こうした種類の住宅ローン市場が縮小するとするならば、米国の住宅市場の根幹を支えているはずの、「移民第3世代」への資金供給が途絶えてしまうのでしょうか?

今のところ金融機関の不良債権問題や、それを組入れた投資商品といった、いわば貸し手サイドの問題としてクローズアップされがちのサブプライム問題ですが、実態経済への影響度はまだまだ読みきれません。

(2007.03.27)



決算コワイ

いわゆる、「不適切な会計処理」が判明する企業が、毎週のように発表されます。

4月以降の日本の株式市場の懸念材料の一つは間違いなく会計不正です。

監査法人は、法人としても、会計士個人としても、自己保全のため監査基準を厳格化していくことは明らかです。
また国内外問わず、買収対象となる企業は、過去に遡って身綺麗であることの証明を求められます。開かずの扉を開けざるを得ないことも出てきます。

米国の会計不正問題のように、どこかで期日を決めて、全上場企業に自首勧告を求めなければいけないような自体も想定しなければならないのではないかとも思っています。

3月決算企業の決算発表が終わる6月までは、ヘッドラインリスクに注意が必要です。

(2007.03.26)



公開と未公開とのギャップ

毎日のように、世界中で株式のMBOが発表されます。
ファンド資金を利用し、経営者が株式を市場から買取って、上場しない非公開会社となります。
FT紙の調査によればNY証券取引所では昨年390億ドル相当の株式がこうした流れの中で未公開化されたとみられています。
また、株式だけでなく債券の世界においても、ディスクロージャーを必要としない私募債の発行が米国を中心に増えています。

これまで投資では最重要とされていたディスクローズを制限するような取引が活発化している背景には、「ファンド」というそれでも「投資する資金」の存在があります。不特定多数の株主や債権者を相手にするより特定の株主や債権者との対話の方が負担が少ないと考える企業サイドと、その他大勢の投資家でいることより発言力の強い主要投資家でいることを望むファンドとの思惑が一致した結果です。

公開企業に対しては厳格すぎるといえる情報公開を求める米国の年金や財団資金が、こうした非公開プロセスをとるファンドにも積極的に資金を投入しているという現実に、危うさと投資家の高慢さを感じます。

(2007.03.23)



春のもの思い

4月が近づき、やわらかな日差しの中で桜の開花が話題になる頃になると、なんということなしに、もの思いにふけるようになります。

この一年何か進歩したのだろうか?
この一年誰かの役に立ったのだろうか?
この一年何が残せたのだろうか?

と、無為に過ごしてしまった月日を数えて落ち込みます。

この周期がお正月ではなく、4月に来るところが不思議なもので、学生時代から如何に精神年齢が成長していないかの証明かもしれません。

まぁ、このもの思い、せいぜい2-3日で終わってしまうのが、悪いところでもあり、良いところでもあるのですけど。

(2007.03.22)



花が咲いた

1年前にいただいた胡蝶蘭が、きれいな花をつけてくれました。

何も手をかけていないのですが、植物の生命力はすばらしいものです。

蘭の鉢は手をかけすぎるとかえって咲かなかったり、今回のように放っておくと咲いたりと気まぐれです。

運用も手数を多くしてもプラスになるとは限らないのと似ています。乱高下している市場は放っておいて、しばらくは花でも愛でて過ごしましょうか。

(2007.03.20)



技術開発の鮮度

リニアで東京-大阪を一時間で移動できると聞き続けて幾年月。

1960年代に開発を初め、70年代に走行実験を開始し、80年代に有人走行をし、2000年に技術は完成と発表。

そして、JR東海曰く、実用化にはあと20年!

開発している方の努力には敬意を表しつつも、なんだか変ではありませんか?

首都機能移転ではありませんが、話だけが盛り上がって、一向に進展しないプロジェクトは、きっと国民が本当に必要としていないのではないかと思うのです。

新幹線の収益をリニアの開発費に使うぐらいなら、新幹線の座席にシートベルトをつけるとか、現状の安全対策を強化してくれた方がよほどうれしいのですが。

(2007.03.19)



証券取引法違反と実刑

堀江被告に実刑判決がでました。どちらにしても最高裁まで上告合戦が続くのでしょうから、今回の結論についてはあまりコメントはありません。

但し有罪か無罪かという点より、実刑判決となったことのアナウンスメント効果は小さくはないのではないかと感じています。

海外と比べ、日本の証券犯罪に対する罰則が甘すぎるのではないかという思いは、業界全体として感じては来たことだと思います。
不正会計=実刑 という図式が当たり前の米国と比べても、そもそも刑事事件になるケースが少なすぎるのではないかと思うのです。

今回のライブドア事件に実刑判決がでたことが、「してしまった者勝ち」の風潮に対する警告になればよいと思います。

(2007.03.16)



NGワード

クイズ番組でNGワードという言葉が使われることがあります。その場面でその単語を使ったらアウト、というものです。
昨今の大臣の方々の失言を聞いているとまさにNGワードのオンパレードです。

日本の食を預かる農林水産大臣が、「水道水を飲んでいる人はいない」と言ってはやはりダメでしょう。ある意味、光熱費をごまかしたこと以上に罪は重いと思います。国会議員だから、国務大臣だから、ではなくて、農林水産大臣だからこそ、言ってはいけないことがあるがあると思うのです。

元々林野行政のエキスパートであったはずの松岡農水大臣が、飲まないと口を滑らせた日本の水道水。単なる失言なのか本音なのか、やや気になるところではあります。

(2007.03.15)



時系列

物事の原因を探るときは、時系列での流れを丁寧に探ってみる必要があります。

今日の日本の株式の下落は米国が下がったからで、米国株が下がった理由は米国の不動産融資への不安が高まったからで、米国株の下げにつられて原油市場も下落した、という説明は正しいでしょうか?

2月末から3月2日までの混乱時に、ほとんど値段を下げなかった原油価格が、株式市場が落ち着いた3月5日の週から下落を始めています。5日からの下落幅は6.5%程度、この2日で3.5%の下落です。

単に、時系列だけを追って見ると、原油が下がり、日本株が下がり、米国が下がり、ドル安が加速して、日本株の下落に戻ってきた、という順番になります。

どちらが正しいということではありませんが、途中経過を飛ばして結論だけを見ていると、重大なことを見過ごすかもしれません。

(2007.03.14)



資本市場の担い手として

日興コーディアルについて、上場が維持されようが廃止されようが、TOBが成功しようがしなかろうが、日興という名前が残ろうがシティという名前になろうが、実は大きな問題ではないと思っています。

むしろ、日本を代表する証券会社として、多くの上場企業の主幹事をつとめ、上場審査をし、資本政策のアドバイザーを行い、資本の引き受けを行ってきた、資本市場の担い手自身が、自ら資本政策を利用した粉飾決算を行ったという事実の重さを、どう清算していくのか、ということが問題なのです。

新興企業での不正会計疑惑が後を絶たないのも、本来審判員であるはずの幹事証券達のモラルの欠如が影響しているからではないかと見られても仕方がないのが現状です。

日興という箱がどうなろうと、日興という会社の行ったこと、延いては、日本の証券会社の行ってきたことに対する真摯な反省がなければ、我が国の証券市場の将来は闇の中です。

(2007.03.13)



鉄泥棒と鉄鋼株

街の鉄材が盗まれるという事件が止らないとのこと。

経験則から言うと、こういうアホみたいな事象がでてくる時は、大概何かが天井をつけているものです。

ちなみに、東証一部の鉄鋼業とTOPIX指数との値動きを比べるとこんな感じ。

深追いは禁物です。

(2007.03.12)



痛みと賢さ

賢い、ということは、「痛い思い」をどれだけ覚えていられるか、ということなのではないかと思っています。

毒は苦く、火は熱い。転べば痛いし、切れば血が出る。
人も動物も、経験した痛みを蓄積し、少しずつ賢くなっていくものです。

賭け事の悪いところは、痛み感覚が麻痺をしてくる常習性にあります。

金融市場は、賭け事をする場所ではありません。
今の金融市場が、痛みに対し鈍感になっていることに、やや懸念を感じています。

(2007.03.09)



有言実行しておけば、

昨日、ザラバの高値(日中の出来値での高値)で、新日鉄が900円を付けたと話題になりました。

90年代日本株が急落するなか、「新日鉄が200円を割ったら日本を救うためにタバコを止めて新日鉄株を買う!」と、今私の隣に座っている社長さんは言っていたような気がします。

未だに、タバコを吸い、新日鉄で大儲けをした様子もないので、きっと私の気のせいだったのでしょう。

ホント、相場観はいいんですけど…

(2007.03.08)



都知事

都知事選の候補がようやく出揃ったようです。
候補の打診を受けた人達が、逃げ回っているのを見て、都知事というのがそれほど魅力のない仕事だと思われているのかと、ややガッカリしている都民です。まぁ石原さんが怖すぎる、というのもあるのでしょうが。

都民として望むこと。
防災を意識した都市計画をたてて、強制力を持って実行して欲しい。
もう、この一点に尽きます。財政が悪化しようが、お金がなくなってオリンピック招致が出来なかろうが、関係なし。
道幅2-3メートル以下の住宅密集地域を都で買上げて再開発するぐらいの意気込みがないと、解決しませんし、少なくてもセットバックとは名ばかりの違法建築物を法的に取り締まるぐらいのことはして欲しーいわけです。

と思うと、変に黒川紀章さんに期待してしまったりするのですが、やや畑違いすぎますか…

(2007.03.07)



できすぎたシナリオ

今回の市場の混乱をめぐる解説に、違和感を持っています。

米国の住宅ローン問題。米国の景気調整。
日本の利上げ。
円キャリートレードの巻き戻し。
中国のスピード調整。

皆もっともらしく聞こえるものの、ひどく陳腐な感じがします。

これが原因で市場が動いたというより、思いもかけず市場が動いたので、人々が心理的に信じやすいありがちなシナリオに乗って、一儲けしている人がいるだけにも見えます。

あまりにも出来すぎたシナリオ展開に、上でも下でもいいから、動けば儲かるという、節操のない投機家の影を感じます。

(2007.03.06)



ボラティリティだけの問題ではない

結局、先週最も下落した市場はどこだったかというと、

日本のマザーズなのです。

細かい市場はともかくとして、これを上回るのは「銀」ぐらい。

震源地といわれた上海は結局5.57%。香港で6.13%。
日米欧の主要市場はほぼ5%程度。
ブラジル・ロシア・フィリピンで7%超え。

で、東証マザーズは10.28%の下落。ヘラクレスで7.36%。
ボラティリティの高さが災いしたと言えないこともないですが、むしろ日本の新興市場についての根本的な個別要因を考えた方がよいのではないかと思ってしまいます。

マザーズやヘラクレス市場については、それこそ『解体的出直し』が必要だという叫びが、投資家からあがっているような気がしてなりません。

(2007.03.05)



その一言が…

1週間ほど前、ヘッジファンドのゲートキーパーの方と話していて、2006年に日本の小型株が急落したのは、日本銀行の量的緩和解除を受けて、マネーサプライが縮小したからだとグラフを示して説明されました。私自身はそうは思っていないのですが、"海外のヘッジファンドの人達がそう思っている"ということは、それなりに意味があるのでしょう。

中国政府は、株式市場の下落にかかわらず、金融引き締めの方向性には変化がないと明言しています。日本についても、日銀首脳から引き締めは継続するとの発言が出ています。
実際がどうであるかは別として、こうした発言そのものが流動性に過度に依存しているヘッジファンドマネージャー達にとっては、一つのシグナルと取られてしまいます。
一方、昨日の米国市場は最悪の雰囲気の中、FRB議長の発言で市場は冷静さを取り戻しました。

不安定な市場において、金融当局や政府首脳の一挙手一投足に注目が集まっています。その一言の重みをよく認識した行動が望まれます。

(2007.03.02)



昨日の絵札

昨日一日で4%以上下げた業種。

証券商品・海運・鉄鋼・非鉄・石油石炭・不動産、それにREIT。

中国関連だから、というよりも、投資家がより過熱感を感じて保有していた順番、といった方が良いのかもしれません。

終わりの近いトランプゲームで、手持ちの絵札を切りに行く心境に似ています。

ババは中国か、不動産か。

いずれにせよゲームセットが近いことを再確認した一日だったのかもしれません。

(2007.03.01)


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